第I部 わが国を取り巻く安全保障環境 

2 台湾との関係

 中国は、台湾は中国の一部であり、台湾問題は中国の内政問題であるとの原則を堅持しており、一つの中国の原則が、中台間の議論の前提であり、基礎であるとしている。また、中国は、平和的な統一を目指す努力は決して放棄しないとし、台湾人民が関心を寄せている問題を解決し、その正当な権限を守る政策や措置をとっていく旨を表明する一方で、外国勢力による中国統一への干渉や台湾独立を狙う動きに強く反対する立場から、武力行使を放棄していないことをたびたび表明している。05(平成17)年3月に制定された「反国家分裂法」においては、台湾が中国から分裂することを招く重大な事態が生じたときなどには、非平和的な方式による措置を講ずると規定されており、武力行使の不放棄が明文化されている。
 中台間の往来・交流・協力の促進については、同年4月に胡錦濤共産党総書記(国家主席)が国民党の連戦(れん・せん)主席(当時)を招き、経済協力や中台間の協議の早期回復の促進などについて話し合って以降、中国は主に台湾の野党や経済界との交流に力を入れている。一方で、台湾の陳水扁(ちん・すいへん)総統が「一つの中国」は議論の前提ではなく、議題の一つとして取り上げるとの立場を明確にしているなど、中台間には基本的立場に隔たりがあり、公式対話が途絶えたまま、膠着(こうちゃく)状態が継続している。双方が公式対話を再開するために、何らかの歩み寄りが見出せるかといった観点から、今後の台湾をめぐる問題の平和的解決に向けた動向が注目される。

 

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