第I部 わが国を取り巻く安全保障環境 

2 軍事

(1)国防政策
 韓国は、全人口の約4分の1が集中する首都ソウルがDMZから至近距離にあるという防衛上の弱点を抱えている。
 韓国は、「外部の軍事的脅威と侵略から国家を保衛し、平和的統一を後押しし、地域の安定と世界平和に寄与する」との国防目標を定めている。この「外部の軍事的脅威」の一つとして、従来、北朝鮮が「主敵」と位置付けられていたが、「2004国防白書」以降、「主敵」との表現は削除された3
 現在、韓国は、情報・科学技術の発展に即した軍事力の整備、三軍の均衡発展、非効率性の打破、社会のすう勢に応じた兵営文化の構築などの必要性から、以下のような改革構想の下、「国防改革2020」の推進を図ろうとしており、その主要部分は、昨年12月、「国防改革に関する法律」として国会において可決された。
1)国防の文民基盤の拡大: 文民が中心となって国防政策を決定・執行し、軍は戦闘任務の遂行に専念する体制を確立する。
2)現代戦の様相に合った軍の構造および戦力体系の構築: 陸軍を中心に常備兵力を68万人から50万人水準に、また、300万人の予備軍も常備兵力と連動させて削減する一方、装備の近代化などにより戦力は増強する。
3)低費用・高効率の国防管理体系に革新: 調達業務の透明性や専門性の保障のため組織と制度を整備するとともに、後方支援分野での情報化基盤の補強や外部委託を行う。
4)時代の状況に応じた兵営文化への改善: 軍人の勤務環境の改善や事故防止体系の確立に取り組む。

(2)軍事動向
 韓国軍の勢力については、陸上戦力は、3個軍22個師団と海兵隊2個師団、合わせて約59万人、海上戦力は、3個艦隊約180隻約14.1万トン、航空戦力は、空軍・海軍を合わせて、9個戦闘航空団など作戦機約610機からなる。
 近年では、海・空軍を中心として近代化に努めており、潜水艦、多目的ヘリコプター、次期戦闘機(F-X)であるF-15Kなどの導入を進めているほか、12(平成24)年までに早期警戒管制機(AWACS:Airborne Warning and Control System)4機が調達される予定である。また、国産駆逐艦(KDX-II、III)の調達も進めており、08(同20)年にはKDX-III(イージスシステム搭載駆逐艦)が就役予定である。韓国海軍はこのほかに大型輸送艦を10(同22)年までに2隻建造する予定である。また、01(同13)年11月に韓国国防科学研究所が短距離ミサイルの試験発射を行うなど、ミサイルの国産化を進めているものとみられている4
 なお、本年度の国防費は、対前年度比約8.8%増の約24兆5,000億ウォンとなっている。
(図表I-2-2-4参照)
 
図表I-2-2-4 韓国の国防費の推移


 
3) 「2006国防白書」では、北朝鮮について、「特に、北朝鮮の通常戦力、核実験、大量破壊兵器、軍事力の前方配置などは、韓国の安全保障に対する深刻な脅威である」と表現されている。
 
4)韓国は、01(平成13)年1月に米国と合意を結び、これまでの米国との取極で180kmまでに制限されていたミサイルの射程を、ミサイル技術管理レジーム(MTCR:Missaile Technology Control Regiume)の規制射程を踏まえ、300kmまで延長できるようになった。それを受け、韓国政府は独自のミサイル開発・生産・保有についての新しい指針を発表し、同年3月、MTCRに参加した。

 

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