3 世界各地で発生するテロの動向
イラクでは、03(平成15)年の米英などの武力行使によるフセイン政権の崩壊以降、治安の悪化と不十分な国境管理によって、国外からテロリストが流入しているとみられており、米国などの軍人のみならず、イラクの一般市民や外国人を標的としたテロがほぼ毎日発生している。昨年6月には、「イラクのアルカイダ」の指導者アブ・ムサブ・アル・ザルカウィが多国籍軍の空爆により殺害されたが、その後も同組織によると見られる活動は継続されている。これらテロ組織の活動は、イラク復興へ向けた取組の大きな障害の一つとなっている。
参照>3節参照
イラク周辺国においても、引き続きテロが発生している。昨年4月には、エジプトのシナイ半島南部のダハブで、スーパーマーケットなどを標的とした連続爆弾テロがあり、20人以上が死亡した。また、ヨルダンでは、05(同17)年11月に、首都アンマンにある欧米系のホテル3か所が爆破され、50人以上が死亡した。
東南アジアは、イラクおよびその周辺国と並んで大規模テロが発生している地域である。インドネシアでは、02(同14)年から05(同17)年にかけて、大規模なテロが発生した
1。これらのテロ事件では、イスラム過激派組織「ジュマ・イスラミーヤ(JI:Jemaah Islamiya)」の関与が指摘されているが、02(同14)年以降、JIの活動家300人以上が逮捕されているほか、05(同17)年11月には、警察当局が同組織の幹部で爆発物の専門家であるアザハリ・フシンを殺害するなど、テロリストに対する取締りの面で一定の成果も見られる。また、タイ南部では、04(同16)年以降、イスラム系分離独立主義過激派による軍・警察施設などに対する襲撃や爆破・放火事件などが多発している。
南アジアでも大規模なテロが散発している。昨年7月には、インド西海岸の都市ムンバイで、複数の列車を連続して爆破するテロがあり、180人以上が死亡した。このテロ事件については、ムンバイの警察当局が、パキスタン軍の情報機関によって計画され、同国に拠点を置くイスラム過激派組織が実行したとする捜査結果を発表しているが、パキスタン政府は事件への関与を否定している。また、昨年10月には、スリランカ中部で、海軍の兵士を乗せたバスの車列に対する自爆テロがあり、巻き添えになった市民も含めて100人以上が死亡した。この事件では、タミル人の反政府武装組織「タミル・イーラム解放のトラ(LTTE:Liberation Tigers of Tamil Eelam)」の関与が伝えられている。
(図表I-1-1-1参照)
1)たとえば、02(平成14)年10月、バリ島のクラブ2か所で、爆弾テロが発生し、202人が死亡した。また、05(同17)年10月、バリ島のレストランなどで、連続爆弾テロが発生し、23人が死亡した。