第6章 国民と防衛庁・自衛隊 

(解説)自衛官の仕事(海自編)

潜水艦乗りの仕事

 航海中、潜水艦乗りは基本的に3交代制で勤務する。この交代制の勤務で当直につくことを“ワッチにつく”という。そして、航海中は、潜望鏡を操作する者を除き、太陽や夜空の星を見る者はいない。
 ワッチ中、当直の一人一人に責任と緊張を維持することが求められる。新米からベテランまで、胸に潜水艦乗りの証である“ドルフィン・マーク=潜水艦き章”を付けている以上、それぞれがそれぞれの場でその重責を担う。そしてそのことに誇りをもつ。
 潜航前は、必要な艦内のバルブの開閉状況などの確認が厳密に行われる。1,000を越えるバルブの状態が適正かどうかをいちいち確認するのは、骨の折れる作業である。しかし、水中に潜航することの危険性を知り尽くしている潜水艦乗りたちは、それを絶対におろそかにはしない。
 また、潜水艦乗りたちは「人間は、ミスをする」ということも知っている。それゆえ、愚直なまでに“ダブル・チェック=再確認”を行う。このため、潜航準備中、各区画の当直が一度確認したものを、一つ一つ幹部たちがチェックして回る。手間のかかることであるが、そのために払う努力を惜しむ者は潜水艦乗りにはいない。
 潜水艦乗りの勤務は決して快適でも楽でもない。しかし、その乗組員たちは、“潜水艦乗り”であるという誇りと使命感を胸に、家族や友人などとの再会を心待ちにしながら、黙々と今日もどこかの海で任務に就いている。
 
浮上航行中の潜水艦「くろしお」

 

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