第6章 国民と防衛庁・自衛隊 

(解説)自衛官の仕事(陸自編)

不発弾処理員の仕事

 電話が鳴り響き、「緊急要請!」の声が響く。この時から、不発弾処理が始まる。工具や服装を整え、サイレンを鳴らして現場へ向かう。不発弾の種類は何か?近くに民家はないか?学校は?いろいろな不安が頭をよぎる。
 現場に到着して最初の任務は、不発弾の識別と現場周辺の確認である。不発弾に近づく時は、不発弾処理員が最も緊張する瞬間である。発見される爆弾は、大戦中のものであり、見分けるのが難しい。じっと見てよく考え、そしておもむろに触る。ほんの一瞬の出来事であるがとても長く感じる。
 識別が終わると、爆弾が安全化1されるまでの間に直射日光や飛来物で爆発しないよう、土嚢などで保護する。その後、爆弾の細部調査や周辺地域との調整が行われ、安全化が行われる。
 「住民避難完了」「交通規制完了」準備が整う。「安全化開始せよ。」戦いのゴングが鳴らされた。安全化は、信管を取除く極めて危険な作業であり、失敗は許されない。深呼吸を一つ。信管にレンチを装着し、手に伝わる感触だけを頼りに、ゆっくりと回転させ信管を外しはじめる。信管が作動しませんように、と後は自分と仲間を信じるだけだ。
 次の瞬間、信管が外れる。安堵とともに、この上ない喜びの瞬間である。そして、「住民避難、交通規制解除。」の連絡が入り、現場での処理が完了し、不発弾との戦いが終わる。
 
信管抜取り作業中の陸自第101不発弾処理隊(沖縄県)の隊員


 
1)安全化とは、不発弾から起爆機能(信管)を取除くことで、信管抜取りや信管破壊などの方法がある。


 

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