第6章 国民と防衛庁・自衛隊 

(VOICE)自衛隊で行われている訓練(海自編)
 
海上自衛隊 第71航空隊 2等海尉 佐川陽一郎(さがわよういちろう)(救難飛行艇操縦士)
US-1Aの操縦席に座る佐川2等海尉

 私は、世界で唯一3mという高い波に着水することができる水陸両用の救難飛行艇(US-1A)の操縦士です。救難飛行艇とは、海の上に着水して人命救助を行う航空機です。救難飛行艇操縦士の資格を取得するためには、陸上のみに着陸する航空機と違い、海上に着水する技術を身につけなければなりません。
 着陸は、飛行機の基本操縦で難しい技術の一つです。風向きや風力を見極め、飛行機のスピードや進入角を確実に調整しなければ、着陸できないからです。このような難しさに加え、波の大きさやうねりの方向などを見極めて安全に着水させなければならないところに、救難飛行艇の難しさがあります。
 このため、繰り返し海上への着水訓練を行い、さまざまな波を経験し波の見極め方を修得していきます。着水時、波を読み間違えると海水の衝撃により機体が損傷することもあり、神経をすり減らしながらの訓練となります。これを乗り越えると、救難飛行艇の操縦士となることができます。
 救難飛行艇の操縦士になるための訓練中に、とても着水できそうにない海上に、機長(教官)がいとも簡単に着水したことを今でも覚えていますが、これこそまさに職人技だと思いました。その時、私もできるようになるのか?という大きな不安が襲ってきました。高い波への着水は人命救助の第一歩であるため、日々精進し教官のような操縦士になれるよう、努力していこうと思います。

 

前の項目に戻る     次の項目に進む