第6章 国民と防衛庁・自衛隊 

(VOICE)准尉や曹の自衛官の活性化の取組

 近年の安全保障環境の変化に伴い、自衛隊の役割は、新たな脅威への対応や国際平和協力活動など、今まで以上に広がっています。また、一方で、自衛隊員の価値観の多様化など、部隊を管理する上での状況も変わってきています。
 こうした中、陸・海・空自衛隊では、責任感、知識・技能、指導力などに優れたベテランの准尉や曹に、曹士自衛官の服務指導などの役割を与え、部隊の規律の維持、士気の高揚などを図る取り組みを行っています。
 ここでは、各幕僚監部において、陸・海・空自衛隊の曹士自衛官の大元締めとして勤務している准曹隊員に、その経験談や抱負などを聞きました。
 
陸上自衛隊先任上級曹長 鈴木准陸尉(中央)海上自衛隊先任伍長 佐賀海曹長(左)航空自衛隊准曹士先任 鹿股准空尉(右)

陸上自衛隊 准陸尉 鈴木弘雄(すずきひろお)

 陸上自衛隊の上級曹長制度は、各種災害派遣、PKO、イラク人道復興支援など陸上自衛隊の役割が変化・拡大している中、それらの活動の中核となり得る小部隊のリーダーである准曹が、あらゆる場面で的確に行動できるよう能力向上を図るとともに、状況判断事項が増加した指揮官を直接補佐して部隊の即応性向上に寄与することを目的としており、18年度から一部の部隊で2年間制度検証を実施した後、全部隊での試行を経て、正式に制度を導入する予定です。
 陸自最先任上級曹長として、准曹隊員に対する次のような課題に取り組みたいと考えます。第一に意識改革です。各階級・階層における地位・役割を再認識し、言われた事だけやるという受け身の姿勢ではなく、自らやるべき事、出来る事を考え積極的に行動する姿勢への意識の転換が必要であると考えます。第二は、情熱と信念です。何事にも情熱と信念を持つ事で、より積極的に業務に取り組み、充実感を持って任務に邁進できると考えています。
 情熱と信念を持って部隊を愛し、仕事を愛し、人を愛し、自分を愛する准曹集団に作り上げる事を目標に、准曹個々が努力するようリードしていきたいと思っています。

海上自衛隊 海曹長 佐賀幾雄(さがいくお)

 海上自衛隊の先任伍長制度は、3年前に米海軍の制度などを参考に導入しました。これまで艦艇部隊に慣例として置かれていた先任伍長(海曹士のまとめ役)を、全ての部隊などに配置した上でネットワーク化し、横のつながりを強化したことが、この制度の最大の特徴です。現在では、先任伍長同士のネットワークを通じて、部隊などの垣根を越えた海曹士の連携の枠組みができ、海上自衛隊の団結の強化に貢献できて、大変嬉しく思っています。
 私は本年10月で退職し、後輩にバトンを渡す予定ですが、約3年間、海上自衛隊先任伍長を務めた経験から言いますと、先任伍長として重要なのは、常に現場に足を運んで現場を把握することです。また、自分の専門分野の腕を磨くとともに、曹士に対して自らが範を示し、現場隊員から信頼を得ることが大切です。さらに、日ごろから指揮官と同じ価値観・目的意識を持つように努力し、服務の指導などにあたっては、厳しくも暖かい鬼軍曹としての心構えを持つことが大切だと思います。
 陸自・空自との関係では、これまでも上級曹長制度(陸)や准曹士先任制度(空)の導入に向けて密接に情報交換などを行ってきました。今後も連携して、それぞれの制度の定着を図りつつ、将来的には防衛庁としての統一された制度として運営されるようになっていけば良いと考えています。

航空自衛隊 准空尉 鹿股龍一(かのまたりゅういち)

 准曹士先任制度とは、航空自衛隊の任務の拡大や隊員の価値観の多様化などに対応するため、指揮官が行う服務指導などを、准尉や上級空曹が補佐する制度です。本年度から2年間の試行を行い、平成20年度から正式運用の予定です。
 航空自衛隊准曹士先任としての抱負は、まず、この制度の有効性をしっかりと定着させることです。規則などで、制度の枠組みが出来上がるだけでなく、実態として「この制度のおかげで組織が良くなった。」という制度にしなければなりません。そのためには、今後2年間でしっかりとこの制度を検証するとともに、各部隊の准曹士先任が、各級指揮官をはじめ周囲からの信頼を得られるよう努力することが何よりも重要だと思っております。
 次に、後輩隊員が目標とするような制度にすることです。後輩隊員が「いつかは、俺/私も准曹士先任になるぞ!」と目標を抱ける制度にできれば、准曹士隊員の意識が向上し、組織全体を活性化できるのではないかと思います。
 そして、最後は、陸自・海自の曹士隊員や在日米軍の下士官との交流を促進させることです。そのような交流によって統合運用や日米共同に貢献できれば幸いです。この制度は、始まったばかりであり、まだまだ暗中模索の状況ですが、与えられた職務をよく認識し、各部隊の准曹士先任と連携を取りながら任務と立場をわきまえ、謙虚な姿勢で取り組んでいきたいと考えております。

 

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