第5章 国際的な安全保障環境の改善 

1 安全保障対話・防衛交流の意義


 冷戦終結後、安全保障環境を改善させるため、各国が保有する軍事力や国防政策の透明性を高め、防衛当局者間の対話・交流、各種共同訓練などを通じて相互の信頼関係を深めることで、無用な軍備増強や不測の事態の発生とその拡大を抑えることが重要との認識が広く共有されるようになった。
 また、大量破壊兵器や弾道ミサイルの拡散の進展、国際テロ組織などの活動を含む新たな脅威や平和と安全に影響を与える多様な事態への対応は、国家間の相互依存関係の一層の進展やグローバル化を背景にして、今日の国際社会にとって差し迫った課題となっており、これらの課題に国際社会が協力して取り組むことが必要であるとの認識が共有されてきている。
 わが国を取り巻く地域においては、日米安全保障条約に基づく米国のプレゼンスと日米の協力が地域の安定に重要な役割を果たしているが、 依然として核戦力を含む大規模な軍事力が存在するとともに、多くの国が軍事力の近代化に力を注いでいる。また、朝鮮半島や台湾海峡をめぐる問題など、不透明、不確実な要素が存在している。
 こうした情勢において、国際社会および地域の平和と安定を確固なものとするためには、各国が相互の信頼関係を深めるとともに、二国間および多国間の協力を推進する必要があるとの認識に基づき、防衛庁・自衛隊は、関係諸国との二国間交流やASEAN地域フォーラム(ARF:ASEAN Regional Forum)などの多国間の安全保障対話、多国間の共同訓練などを重視しており、今後とも、関係諸国の動向をも見極めつつ、その内容を深め、幅を広げることで、安全保障環境の改善に向けて積極的に取り組むこととしている。

 

前の項目に戻る     次の項目に進む