第5章 国際的な安全保障環境の改善 

5 パキスタン等大地震に際しての国際緊急援助活動


 昨年10月8日にパキスタンのカシミール地方で発生した大規模地震により、激甚な被害が生じ、被災地は、陸路からの支援が困難となり、ヘリコプター等での空輸が必要となった。
 このため、同月11日 、パキスタン政府の要請により、外務大臣から防衛庁長官に対し、国際緊急援助隊法に基づく協力を求める協議が行われ、同月12日には現地で受入れ調整を行うパキスタン国際緊急航空援助隊の先遣隊20名を派遣するとともに、防衛庁長官から陸・空自に対し派遣命令を発出した。これを受け、翌日より順次に、現地での支援活動を行う陸自ヘリコプター3機を搭載した空自C-130H輸送機4機が千歳を出発し、16日にかけてイスラマバードまでの輸送を行った。さらに14日、陸自航空援助隊と資器材を乗せた政府専用機2機が千歳を出発し、同日現地へ到着した。
 同月17日、陸自航空援助隊はイスラマバードから被災地であるバタグラム間で援助物資等の輸送を開始した。
 さらに、同月21日より、陸自ヘリコプター3機および要員を追加派遣し、同月25日からは計6機態勢での輸送を行い、11月24日までの活動期間中、医薬品やテントなどの援助物資を約41トン、被災民や患者などの人員720名を輸送した。
 11月14日、防衛庁長官は、被災地で寸断されていた道路が復旧し、現地のニーズも満たされつつあることから、国際緊急援助活動中の自衛隊部隊に活動終結命令を発出し、派遣部隊は12月2日までに帰国した。
(図表5-1-19参照)
 
現地で被災者などの輸送を行う陸自ヘリコプター
 
図表5-1-19 部隊の展開の概要(パキスタン等大地震に際しての国際緊急援助活動)

 今回の自衛隊による国際緊急援助活動の特徴としては、空自C-130H輸送機によって陸自ヘリコプターを初めて外国に輸送したことや、現地で被災者支援を行っている国際協力機構(JICA:Japan International Cooperation Agency)などの国際緊急援助隊医療チームや国際移住機関(IOM:International Organization for Migration)1などと連携をしながら輸送を行ったことがあげられる。
 こうした自衛隊の支援活動に対し、同月12日、パキスタンのムシャラフ大統領は、イスラマバードのヘリポートを訪れ、支援を行っている陸自隊員を激励するとともに、14日には、小泉総理との電話会談において、「自衛隊は素晴らしい働きをしている。」と述べ、わが国の支援に謝意を表明した。
 
工藤隊長と堅い握手を交わすムシャラフ大統領


 
1)51(昭和26)年、欧州・ラテン・アメリカにおける人口・難民・移民問題解決のために発足され、89(平成元)年の憲章改正により「国際移住機関(IOM)」となり、広く難民の輸送支援、移民支援、人的資源の移転を扱っている非国連の国際機関


 

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