第4章 日米安全保障体制の強化 

2 沖縄に所在する在日米軍施設・区域


 沖縄における在日米軍については、先述のとおり、沖縄県に在日米軍施設・区域が集中し、県民生活に多大の影響が出ており、その整理・統合・縮小をはじめとする沖縄に関連する諸課題については、内閣の最重要課題の1つとして政府をあげて取り組んでいる。防衛庁も、従来から、日米安保条約の目的達成と地元の要望との調和を図りつつ、問題解決のためさまざまな施策を行い、最大限の努力をしてきている。
 なかでも、日米両国政府がまとめた「沖縄に関する特別行動委員会」(SACO)最終報告の内容を着実に実現することが、沖縄県民の負担軽減のためには最も確実な道であると考えており、引き続き、その的確かつ迅速な実現に向けて努力を続けている。なお、本年5月の再編の最終取りまとめにおいては、「SACO最終報告の着実な実施の重要性を強調しつつ、SACOによる移設・返還計画については再評価が必要となる可能性がある。」とされた。

(1)SACO設置以前における整理・統合・縮小への取組
 72(昭和47)年、沖縄の復帰に伴い、政府は、日米安保条約に基づき、83施設、約278km2を在日米軍施設・区域(専用施設)として提供した。一方、沖縄県に在日米軍施設・区域が集中し、地域の振興開発や計画的発展に制約が生ずるとともに、県民生活に多大の影響が出ているとして、その整理・縮小が強く要望されてきた。
 このような状況を踏まえ、日米両国は、地元の要望の強い事案を中心に、整理・統合・縮小の努力を継続的に行ってきた。72(同47)年の佐藤・ニクソン共同発表における確認事項を踏まえ、73(同48)年、74(同49)年、76(同51)年の日米安全保障協議委員会(SCC)において、沖縄県における在日米軍施設・区域の整理統合計画が了承された。また、90(平成2)年、いわゆる23事案については、返還に向けて必要な調整・手続を進めることを、日米合同委員会で合意した。一方、県民の強い要望である、いわゆる沖縄3事案(那覇港湾施設の返還、読谷補助飛行場の返還、県道104号線越え実弾射撃訓練の移転)についても、95(同7)年の日米首脳会談での意見の一致により、解決に向けて努力することになった。
参照> 資料44

 以上のような取り組みの結果、沖縄復帰時に83施設、約278km2であった在日米軍施設・区域(専用施設)は、本年1月現在、36施設、約233km2となっている。しかしながら、依然、面積にして在日米軍施設・区域(専用施設)の約75%が沖縄県に集中し、県面積の約10%、沖縄本島の約18%を占めている状況となっている。
(図表4-2-13参照)
 
図表4-2-13 沖縄在日米軍施設・区域(専用施設)の件数及び面積の推移

(2)SACO設置などの経緯
 95(平成7)年に起きた不幸な事件や、これに続く沖縄県知事の駐留軍用地特措法に基づく署名・押印の拒否などを契機として、全国的にも沖縄に関する諸問題に対する世論の関心が高まった。
 政府は、沖縄県民の負担を可能な限り軽減し、国民全体で分かち合うべきであるとの考えの下、沖縄県の将来発展のため、在日米軍施設・区域の整理・統合・縮小に向けて一層の努力を払うとともに、振興策についても全力で取り組むこととした。そして、沖縄県に所在する在日米軍施設・区域にかかわる諸課題を協議する目的で、同年、国と沖縄県との間に「沖縄米軍基地問題協議会」を、また、日米間にSACOを設置した。
 その後、約1年をかけて集中的な検討が行われ、96(同8)年、いわゆるSACO最終報告が取りまとめられた。

(3)SACO最終報告の概要および進捗状況
 SACO最終報告の内容は、土地の返還(普天間飛行場など計6施設の全部返還、北部訓練場など5施設の一部返還)、訓練や運用の方法の調整(県道104号線越え実弾射撃訓練の本土演習場での分散実施など)、騒音軽減、地位協定の運用改善である。SACO最終報告が実施されることにより返還される土地は、沖縄県に所在する在日米軍施設・区域の面積の約21%(約50km2)に相当し、復帰時からSACO最終報告までの間の返還面積約43km2を上回るものとなる。
 SACO最終報告の実現に政府として取り組んできた結果、土地の返還のうち、普天間飛行場を除く10の施設・区域については、安波(あは)訓練場、楚辺(そべ)通信所の一部(約236m2)、キャンプ桑江の一部(北側:約38ha)の返還が実現したほか、8事案について地元の了解が得られ、その一部について土地の返還に必要な施設の移設工事を行ってきている。このうち、瀬名波(せなは)通信施設、楚辺通信所の残余部分、読谷(よみたん)補助飛行場については、概ね返還の目途が立つなど、9事案が着実に進捗している。また、土地の返還以外の案件についても、そのほとんどが実現している。
 防衛庁は、今後とも、地元の理解と協力を得ながら、SACO最終報告の実現に向け、最大限の努力を払っていく。

ア 普天間飛行場の移設・返還
 普天間飛行場の移設・返還については、兵力態勢の再編に関する日米協議の過程において、最重要課題の1つと位置付け、一日も早い移設・返還を可能にする措置について検討を行った。(その経緯と最終とりまとめの内容については本節5参照)

イ 那覇港湾施設の移設・返還
 那覇港湾施設の移設・返還について、移設予定地とされた浦添市では、01(同13)年11月、市長が移設受入れを表明した。これを受け、政府と地元地方公共団体との間に、「那覇港湾施設移設に関する協議会」(移設協議会)などを設置し、同港湾施設の移設・返還を円滑に推進するための協議を進めている。
 防衛庁は、本年5月の最終とりまとめを踏まえつつ、今後とも、代替施設の整備と民間港湾の整備計画との整合を図りつつ、関係機関と協議を進め、同港湾施設の移設・返還の実現に向けて取り組んでいくこととしている。
参照> 本節5

ウ 北部訓練場のヘリコプター着陸帯の移設
 北部訓練場のヘリコプター着陸帯(以下「着陸帯」という)の移設について、関係する国頭村と東村の理解が得られ、7か所の着陸帯の移設などの後、北部訓練場の過半を返還することを、99(同11)年の日米合同委員会で合意した。
 防衛庁は、平成10年度から平成11年度にかけて、着陸帯の移設候補地とその周辺などで行った環境調査の結果、この調査区域に、特記すべき野生生物の種が多数確認されたことから、より自然環境に与える影響が少ない移設先候補地の有無などを調査するため、02(同14)年から04(同16)年3月にかけ環境調査を実施した。この環境調査などを踏まえ、日米間で環境および運用面から協議した結果、本年2月の日米合同委員会において、99(同11)年の基本合意を変更(移設する着陸帯7か所を6か所とし、造成規模を縮小)することを合意した。着陸帯の移設にあたっては、引き続き沖縄県環境影響評価条例に準じて適切に環境影響評価を行い、生活環境や自然環境に著しい影響を及ぼすことのないよう最大限の努力を払うこととしている。

エ 県道104号線越え実弾射撃訓練の本土移転
 沖縄県道104号線越え実弾射撃訓練の分散・実施は、本土5演習場において、関係地方公共団体などの理解と協力を得て、平成9年度から行われている。今後も防衛庁は、実弾射撃訓練が円滑にできるよう努力していくこととしている。
(図表4-2-14・15参照)
 
図表4-2-14 SACO最終報告関連施設・区域
 
図表4-2-15 SACO最終報告の進捗状況

(4)駐留軍用地跡地利用への取組
 防衛庁は、駐留軍用地の返還にあたり、従来より、建物、工作物の撤去などの原状回復措置や駐留軍用地返還特措法に基づき、跡地の所有者などに対する給付金の支給などの措置を行ってきた。また、沖縄振興特別措置法(02(同14)年施行)に基づき、大規模跡地または特定跡地に指定された跡地の所有者などに対し給付金を支給することとなっている。
 また、01(同13)年12月に取りまとめられた「普天間飛行場の跡地利用の促進及び円滑化等に係る取組分野ごとの課題と対応方針」などを踏まえ、関係市町村において跡地利用計画の策定に向けた取り組みがなされており、本年2月には沖縄県、宜野湾市において、普天間飛行場跡地利用基本方針が策定された。
 防衛庁としては、今後とも、関係府省および県や市町村と連携・協力して、跡地利用の促進と円滑化などに取り組んでいくこととしている。

 

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