第4章 日米安全保障体制の強化 

5 在日米軍などの兵力態勢の再編(第3段階)


1 概要


(1)抑止力の維持と地元負担の軽減の観点からの検討
 在日米軍の兵力態勢再編は、同盟関係にとって極めて重要な在日米軍のプレゼンスを確保し、日米安保体制を基盤とする日米同盟を新たな安全保障環境に適応させ、わが国の平和とアジア太平洋地域における平和と安定を確固たるものにするためのものである。
 この再編に関する検討は、抑止力の維持と地元負担の軽減を基本的な考え方とし、第1段階の共通戦略目標の実現に必要な、第2段階の役割・任務・能力の検討を踏まえ進められた。
 05(同17)年10月の「共同文書」においても示されているように、検討にあたっては、役割・任務・能力の検討などに基づき、日米間の司令部間の連携、施設・区域の共同使用、在日米軍施設・区域の収容能力の活用、人口密集地域における特別の配慮、在日米軍施設・区域の軍民共同使用などを「指針となる考え方」として設定した。(図表4-2-7参照)
 
図表4-2-7 指針となる考え方(概要)

 また、同文書においては、これまでの検討の成果として、在日米軍とこれに関連する自衛隊の部隊の態勢の再編についての具体的な方向性を示した1。さらに、この文書において、日米それぞれの国内と日米間で調整を行い、事務当局に対し、「これらの個別的かつ相互に関連する具体案を最終的に取りまとめ、具体的な実施日程を含めた計画を2006年3月までに作成するよう」指示がなされた。

(2)最終取りまとめ(06(平成18)年5月)まで
 昨年10月の「共同文書」の発表後、わが国においては、同年11月に、具体的措置の的確かつ迅速な実施を確保するための方策に関し、総合的観点から必要な措置を講ずることを検討するとの閣議決定を行った。また、米軍基地再編関係閣僚による会合を開き、政府全体として取り組んできた。基地の所在する地元に対しては、その内容について理解と協力を求めるべく、防衛庁長官が自ら訪問するなど、誠心誠意説明を行った。
 日米間では、実務レベルの協議のほか、本年1月と4月に2度にわたり、日米防衛首脳会談が行われるなど、頻繁に協議が行われた。
 
再編についての説明のため稲嶺沖縄県知事と面会する額賀防衛庁長官

(3)再編案の最終取りまとめ
 本年5月1日の「2+2」会合において、「再編実施のための日米のロードマップ」(「ロードマップ」)という形で、兵力態勢の再編の最終的な取りまとめがなされ、具体的施策を実施するための詳細が示された。
参照> 資料38

(図表4-2-8・9参照)
 
図表4-2-8 在日米軍などの兵力態勢の再編(1)
図表4-2-8 在日米軍などの兵力態勢の再編(2)
 
図表4-2-9 再編に関する主なスケジュール

【抑止力の維持に関連するもの】
 このうち、抑止力の維持に関するものとしては、たとえば、
・在日米陸軍司令部の改編
・米軍の横田飛行場やキャンプ座間における自衛隊と在日米軍の司令部の併置による日米の司令部間の連携向上
・米軍嘉手納(かでな)飛行場などから各地の航空自衛隊(空自)基地への航空機の訓練の移転による日米間の相互運用性の向上
・沖縄のキャンプ・ハンセンや嘉手納飛行場における施設・区域の日米共同使用
・空自車力分屯基地へのBMD用移動式レーダーの展開
などがある。これらにより、同盟の能力は着実に向上し、さまざまな課題に対して自衛隊と米軍が連携して対応していく基盤が確保できるものと考える。

【地元負担の軽減に関連するもの】
 また、地元負担の軽減の観点からは、
・普天間(ふてんま)飛行場の移設・返還
・在沖米海兵隊要員とその家族のグアムへの移転
・嘉手納飛行場以南の人口が集中している地域の相当規模の土地の返還
などの一連の沖縄に関する再編、また、
・人口密集地への配慮としての厚木飛行場から岩国飛行場への空母艦載機の移駐
・キャンプ座間、米軍相模総合補給廠の一部返還など
・横田空域の一部返還をはじめとする空域や航空管制に関する措置
などがあげられる。
 さらに、嘉手納飛行場などからの航空機の訓練の移転は、訓練活動による地元への影響の軽減にも資するものである。
 これらの諸施策を実施することによって、わが国全体として負担の軽減が図られるものと考えられる。
 なお、在沖米海兵隊約8,000人のグアムへの移転については、一定の初動対処能力が沖縄に維持されること、航空輸送や高速輸送艦の能力などによる機動力の向上などが見込まれることなどから、在日米軍が有している抑止力は維持されると考えている。

【再編案の実施に要する費用】
 これらの実施のための施設整備に要する建設費そのほかの費用は、日米地位協定2第24条の規定を踏まえ、「ロードマップ」において明示されない限り日本国政府が負担し、米国政府は、これらの案の実施により生ずる運用上の費用を負担するとされている。在日米軍の再編は、沖縄をはじめとする地元の負担軽減と抑止力の維持に資する重要な課題であり、わが国が負担すべき経費の内容を精査した上で、適切に予算上の措置を講じることとしている。
参照> 資料80

 これら再編の具体策の内容は以下のとおりである。


 
1)共同文書において取り扱われなかった米軍施設・区域および兵力構成における将来の変更は、日米安保条約および関連取極の下での現在の慣行に従って取り扱われることとされた。

 
2)正式名称は「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定」


 

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