第3章 わが国の防衛のための自衛隊の運用と災害派遣や国民保護 

(VOICE)災害派遣に従事した隊員の声(海自)

 海難救助に救難員として参加した海自第21航空群の千葉1曹に当時の様子などを聞きました。

第21航空群(千葉県) 第101航空隊  1等海曹  千葉文博(ちばふみひろ)

 我々SH−60J型ヘリコプター搭乗員は、日頃から訓練を積み重ね、あらゆる任務に即応する準備を整えています。救難任務もその一つです。
 平成17年7月26日、台風7号が関東地方に接近しつつあるときに、八丈島東方沖でヨットが航行不能となりました。その遭難信号を受信した海上保安庁からの災害派遣要請を受け、救難員である私は、SH−60Jに搭乗し館山基地を離陸、遭難者の救助に向かいました。
 離陸後、「ヨットの乗員2名が浸水の始まった船体を放棄し、漂流。位置は館山から南南東220Kmの海上。海上保安庁のジェット機が捜索中。」との情報を司令部から無線で入手しました。現場に近づくと、風は毎秒20m、波の高さは5mを超えており、ヘリコプターの残燃料及び基地からの距離から考えて、捜索時間は40分間程度しかないことから、厳しい条件下での捜索、救助となることが予想されました。
 捜索開始直後に、海上保安庁のジェット機が漂流しているヨットを発見し、間もなく遭難者の乗った1.5m程度の救命ボートを波間に発見しました。救助のためホバリングしましたが、ボートは大きなうねりに翻弄されており、また、本機も強い風とうねりの影響を受け海面からの高度が大きく上下しました。しかし、ボートから不安そうな顔を覗かせる2名の遭難者を確認したとき「必ず無事に救助するぞ!」という強い気持ちが再び湧き、厳しい気象条件ではありましたが、搭乗員一丸となり遭難者を無事救助、任務を完遂することができました。
 救助後、涙を流しながら手を握ってきた遭難者の顔を見たとき、救助できた喜びと任務の達成感で胸が熱くなりました。この気持ちを忘れず、これからも訓練に励み、あらゆる任務に即応できるよう頑張っていきます。
 
(VOICE)災害派遣に従事した隊員の声(海上自衛官) 写真

 

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