第3章 わが国の防衛のための自衛隊の運用と災害派遣や国民保護 

(VOICE)災害派遣(雪害)に従事した隊員の声(陸自)

 新潟県上越市に所在する陸自第2普通科連隊は、「平成18年豪雪」において同県からの要請により、災害派遣を行いました。湯沢町における災害派遣に現場指揮官(中隊長)として参加した吉田1等陸尉に聞きました。

第2普通科連隊(新潟県)本部管理中隊長  1等陸尉  吉田一彦(よしだかずひこ)

 新潟県湯沢町では、1月に入り、町全体の積雪が大人の身長の2倍を超え、自治体では一般国道の除雪で手一杯となり、学校までは手が回らない状態でした。しかし小中学校では校舎の耐雪量を上回る程となっていたため、一刻も早く、校舎屋上の除雪を行う必要がありました。
 特に、校舎から張り出した雪庇(せっぴ)は、数トンにもなるほどの重さとなって、これが屋上から落ちた場合きわめて危険な状況だったので、登下校路の危険箇所の除雪を最優先に行いました。雪庇除去作業は、校舎の15m以上の高さの屋上の縁から2m以上張り出している雪庇の上に乗り出して行う作業でした。実際、新潟県内では、屋根からの雪下ろし中の転落事故で多くの方が亡くなられていましたので、高所で行動するための特別な訓練を積んだレンジャ−隊員を主体にして、命綱を付けて行わなければなりませんでした。部隊全力で作業を実施しましたが、きわめて多い積雪量と固く締まった雪に悪戦苦闘しつつ、除雪作業は思うようにはかどらないなか、大雪にも負けず、毎日元気に登下校する子供達の「じえいたいさん!ガンバッテ−!」との応援に励まされ、任務を遂行しました。
 災害派遣後、派遣先の小中学校校長会会長を始め皆様からお手紙を頂きましたが、それは「生徒達は、黙々と作業に励む隊員の皆様の姿から言葉では表現できない何かを学び取っていたようです。無言の教育とでも言ったら良いのでしょうか。教室に座って授業を受けているだけでは学べない何かです。」など心のこもった内容でした。この災害派遣活動を通じて、大雪で困っていた地域の皆様のお役に立てたことを、大変うれしく感じています。
 
(VOICE)災害派遣(雪害)に従事した隊員の声(陸自) 写真(1)
 
(VOICE)災害派遣(雪害)に従事した隊員の声(陸自) 写真(2)
 
(VOICE)災害派遣(雪害)に従事した隊員の声(陸自) 写真(3)

 

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