第2章 わが国の防衛政策の基本 

第3節 武力攻撃事態などへの対応のための枠組み


 わが国に対する武力攻撃など、国や国民の平和と安全にとって最も重大な事態への対処について、国として基本的な体制の整備を図ることは極めて重要である。中でも武力攻撃事態1などを終結させるための自衛隊、米軍の行動を円滑にする法制、国民の生命、財産を保護するための法制は国家存立の基盤をなすものとして当然整備すべきものであり、また、わが国の安全保障上の長年の課題でもあった。
 このような法制の整備は、わが国に対する武力攻撃の抑止に資するほか、武力攻撃事態などにおける文民統制(シビリアン・コントロール)の貫徹の観点からも重要である。
 54(昭和29)年、わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つ組織である防衛庁・自衛隊の設置のための防衛庁設置法および自衛隊法の制定により、このような法制の骨幹が整備されたが、これらのみでは不十分であり、なお整備すべき事項が残されていた。
 防衛庁においても、77(同52)年、福田総理の承認の下、三原防衛庁長官の指示により、なお残された法制上の不備などについての問題点の整理を目的として、いわゆる「有事法制」についての研究が始まり、その後、およそ4半世紀にわたり研究がなされた。
 02(平成14)年2月、小泉総理は、第154回通常国会における施政方針演説で、政府として「有事に強い国づくりを進めるため」具体的な法整備を進めることを明らかにした。これを受け、わが国に対する武力攻撃などへの対処に関して必要な法制(事態対処関連法制)として、03(同15)年に武力攻撃事態対処法をはじめとする武力攻撃事態対処関連3法2が成立した。また、04(同16)年には、国民保護法など、事態対処法制関連7法が成立し、関連3条約の締結が承認された。
参照> 本節2

 わが国の武力攻撃などへの対応のための制度などを定める法制について、これまで一般に、法制全体の総称として「有事法制3」という語が使われてきた。本節では、こうした有事法制に基づく武力攻撃事態などへの対応の枠組みの概要について説明する。


 
1)わが国に対する外部からの武力攻撃が発生した事態又は武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態

 
2)武力攻撃事態対処法(武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律)、安全保障会議設置法の一部改正、自衛隊法等の一部改正

 
3)「有事法制」については、必ずしも概念として定まったものがあるわけではなく、かつて自衛隊法第76条の規定により防衛出動を命ぜられるという自衛隊の行動にかかわる法制についての研究が「有事法制研究」として行われるなど、多義的である。本白書では、有事法制と用いる場合、03年および04年に整備された事態対処関連法制を指す。


 

前の項目に戻る     次の項目に進む