第4章 国際的な安全保障環境の改善のための主体的・積極的な取組 |
インドネシア国際緊急援助活動における1つのエピソード
本年1月から本年3月にかけて、インドネシア・スマトラ島沖大地震及びインド洋津波災害に際しての国際緊急援助活動に海自自衛艦隊連絡官兼ねて統合連絡調整所(JCC)の要員として派遣された小座間善隆2等海佐(現所属:潜水艦「まきしお」艦長)に、国際緊急援助活動に参加した際のエピソードについて聞きました。
現地での職務として、航空・海上輸送にかかわる調整、外務省バンダ・アチェ臨時事務所などの関係機関との連絡調整などを行いました。これらを通じて統合運用の実動の場面に係わったこと、また被災されている現地の人々の役に立て、感謝されたことなど、本派遣に参加できて良かったと思っています。
今回、少し本来職務から離れますが、現地での活動の中で印象に残っているエピソードについて紹介します。
派遣先のスマトラ島では、先の大戦時に旧日本海軍が駐留したことがあるためか現地の人々は、我々自衛隊に対しても極めて好意的であり、大きな期待をしていることを肌で感じました。このような背景があるためか、「バンダ・アチェ空港近傍にある「忠魂碑」と「慰霊碑」が今回の地震で倒壊している。」と現地の方からの通報を受けました。これらの碑は、昭和19年秋のバンダ・アチェ空港建設時に亡くなられた渋谷部隊の兵士や現地の労務者の方々のため、「海軍渋谷部隊」という建設部隊が建立したものであることが確認できました。本通報を受けた海自派遣部隊は、何とか修復させたいとの思いから、インドネシア国軍(TNI)の西海岸復興責任者に相談を持ちかけたところ、インドネシア陸軍参謀本部まで話が上がり、快く引き受けて頂けることとなりました。作業は、TNIと海自派遣部隊の協力により2月末には修復が終わり、2つの碑は見違えるほどに生まれ変わりました。3月初旬、TNI関係者、外務省バンダ・アチェ臨時事務所長、陸自派遣部隊長、JCC所長の参列を得て、海自派遣部隊指揮官の主催する修復完成セレモニーを実施し、修復作業を完遂しました。
このような慰霊碑に対する日本側の思いを尊重し協力してくれたインドネシア軍の日本人に対する温かい配慮に触れ、今回の修復作業を通じて日本とインドネシアの関係の維持・向上に少しでも寄与できたことを光栄に思っています。