第4章 国際的な安全保障環境の改善のための主体的・積極的な取組 

2 イラク国家再建に向けた取組への協力


 イラクにおける主要な戦闘は終結し、国際社会は、03(平成15)年5月、安保理決議第1483号1及びそれに引き続く安保理決議を採択し、イラクの復興支援に積極的に取り組んでいる。イラクの再建は、イラク国民や中東地域の平和と安定はもとより、わが国を含む国際社会の平和と安全の確保にとって極めて重要である。
 そこで、憲法の範囲内で、主体的かつ積極的に、できる限りの支援、協力を行うため、03(同15)年7月から8月まで、国際平和協力法の枠組みでイラクにおける被災民救援のため、C-130H輸送機による救援物資の輸送を行った。また、政府は派遣した政府調査チームの現地調査結果を踏まえ、イラクの再建に対しわが国にふさわしい貢献策として、自衛隊と文民による人道復興支援などのための活動を行うことが必要との認識に立って、同年6月、イラク人道復興支援特措法案を第156回国会に提出、同法案は同年7月、可決、成立した。
 これを受け、03(同15)年12月以降、自衛隊は順次部隊を現地に派遣し、外務省と連携しながら、医療、給水、公共施設の復旧・整備、人道復興関連物資などの輸送(人道復興支援活動)を中心とした活動を行っている。また、これに支障を及ぼさない範囲で、諸外国が行うイラクの国内の安全と安定を回復する活動の支援(安全確保支援活動)も行っている。

 
大野防衛庁長官(左)から隊旗を授与される第6次イラク復興支援群長(右) (伊丹駐屯地)

 わが国の活動は国際社会の一員としてイラクの復興、ひいては中東地域全体の安定に寄与するものであり、これは石油資源の9割近くをこの地域に依存しているわが国にとって、国家の繁栄と安定に直結している極めて重要なことである。また、わが国がイラクにおいて人的貢献を行い、米国とともにイラクの復興のために活動することにより、日米両国がますます強固な信頼関係で結ばれ、ひいては日米同盟の強化にも寄与している。
 こうしたイラクの国家再建に向けた取組に対するわが国の活動は、国際社会とイラク国民から高い評価を受けており、国際社会におけるわが国に対する信頼の向上のみならず、日米の安全保障面での協力を更に緊密かつ実効性あるものとする上で有意義である。
 米英などによるイラクへの武力行使開始から、イラク人道復興支援特措法の成立及び同法に基づく活動の開始に至るまでの経緯の概要は、次表のとおりである。

 
学校訪問におけるイラクの子供達と隊員

 
給水を受けるサマーワ住民

 
イラク問題への対応の主な経過概要


 
1)米英軍の占領軍としての特別な権限・義務を確認し、国際的に承認されたイラク国民による政府が設立されるまで、「当局」に領土の実効的な施政を通じてイラク国民の福祉を増進することを要請
イラクの国民に対する人道上の支援、イラクの復興支援を行うこと、同国の安定と安全に貢献することを国連加盟国に要請している。



 

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