第3章 新たな脅威や多様な事態への実効的な対応と本格的な侵略事態への備え 

総務省消防庁で勤務する隊員の声

総務省消防庁(出向) 1等陸佐 大森丈義

 防衛庁・自衛隊から他省庁に出向して、他省庁の職員とともに任務を遂行する事務官や幹部自衛官がいます。
 昨年8月から総務省消防庁で国民保護運用室長として勤務している大森1等陸佐に、その勤務について聞きました。

 
林 消防庁長官(左)と大森1等陸佐(右)

 昨年6月に国民保護法が国会議員の大多数の賛成を得て成立しました。これを受けて、総務省消防庁は、住民の避難、安否情報、武力攻撃災害が発生した場合の消防に関する指示のほか、地方公共団体との窓口として国と地方を結びつける重要な役割を担う事になりました。国の安全保障・防衛というものは、軍事と非軍事の2本立てで考えることが不可欠です。わが国長年の懸案であった有事において国民を守るための体制作りに、自衛官として加わることができたことが一番の幸運と感じています。
 当面の目標は、すべての都道府県に国民保護計画を作成してもらうことです。このため消防庁は、麻生総務大臣が主催する「地方公共団体の国民保護に関する懇談会」を開催し、各界の有識者に意見を伺いながら国民保護事務を進めています。昨年の10月に開催した、第2回懇談会において、国民保護で想定する武力攻撃事態等の様相と国家・国民の具体的な対応について、過去の事例を引用しながら説明を行いました。この説明により、これまで「絵空ごとの世界」で論じられていた国民保護が、「共通にイメージできる世界」となったのではないかと思います。また、これにより、その後の国民保護の検討を大きく前進させることができたと思っています。
 着任後、数度に渡る台風の上陸、新潟県中越地震、スマトラ島沖地震、福岡西方沖地震など多くの犠牲者が出た災害を経験しました。この際、消防庁は、全職員(定員119名)がローテーションによる全庁体制で、平素の消防・防災行政事務をこなしながら指揮所活動を実施しました。活動を通じ、消防庁職員も国民を護るという意識においては、自衛官と同様に熱い血が流れていることを感じました。また、消防庁と自衛隊の連携も着実に深まっています。本年5月12日には、広域応援に派遣される消防部隊の海上輸送をテーマに、消防庁長官に随行し、海上自衛隊の輸送艦「しもきた」の研修もさせていただきました。
 国民保護とは、「武力攻撃災害から国民の生命・身体・財産を守り、また、その被害を最小にするための活動」です。世界で最強の軍隊を持ち、高度なセキュリティを備える米国でさえも、9.11テロ攻撃を受け、数千人もの犠牲者を出しました。このことは、これまでの危機管理(crisis management)に加え被害管理(consequence management)の重要性を改めて認識させられることとなりました。この被害管理の中に位置付けられるわが国の国民保護の達成に、国民の皆様方のご理解とご協力をよろしくお願い致します。

 

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