第3章 新たな脅威や多様な事態への実効的な対応と本格的な侵略事態への備え |
海外で勤務する隊員の声(防衛駐在官)
防衛駐在官 1等空佐 鈴木雄三
防衛駐在官は、本年6月末現在、世界各国に所在する在外公館のうち37カ所に48名の自衛官が配置されています。
02(平成14)年から在ウクライナ大使館に防衛駐在官として勤務している鈴木雄三1等空佐に、勤務の様子やエピソードなどを聞きました。
Q1:本任務に従事して良かった事について
旧ソ連の体制が未だ色濃く残っていた前クチマ政権下でのウクライナ国民の生活や考え方、その後の『オレンジ革命』を契機に大きく民主化に向けて日々著しい変化を遂げている今日のウクライナの新旧両体制を実際の目で見て肌で感じ取る機会を得られたことが印象に強く残っています。
また、防衛駐在官としての仕事を通じて日本という国が世界の国々から尊敬の念をもって見られていることが良く分かり、改めて祖国に誇りを持てました。
さらに世界各国の武官と友情を育むことが出来たことはこの上ない財産だと感じています。
Q2:本任務で日頃心掛けていることについて
任地で起こった事柄や要人の発言等について総合的に捉え、今何が起こっているのか、その背景には何があるのか、またわが国や世界の安全保障にとってどのような影響があるのか等、自分なりに分析、検討して理解するよう心掛けています。
そのためには、任地における人間関係、信頼関係の構築に努め、一般報道だけに止まらず、関係者、一般市民との交流を通じて可能な限り多くの情報に接し、取捨選択し、また一つ一つの情報を関連付けて理解していくようにしています。
Q3:在勤中のエピソードについて
「オレンジ革命」の際、治安悪化を懸念し状況を確認するため、−10℃を下回るような中、ロシア独特の毛皮の帽子をかぶって毎日デモ隊やピケの中に入って様子を見、またデモ参加者たちの話しを聞いたりしました。その際、夫婦で抗議デモに参加していたある市民が「このデモには年老いた母が『自分は老齢で参加できないので自分の代わりに参加して欲しい』と言った。勿論、私たち夫婦も自分達の意思で参加している。何故ならば、子供たちの時代にはウクライナが良い国になって欲しいから。」と目を潤ませて語っていたのが印象的でした。