第3章 新たな脅威や多様な事態への実効的な対応と本格的な侵略事態への備え |
事態対処法制関連7法及び関連3条約
(1)海上輸送規制法
武力攻撃事態に際して、わが国領海又はわが国周辺の公海(海洋法に関する国連条約に規定する排他的経済水域を含む。)における外国軍用品等(武器などの外国軍用品又は外国軍隊などの構成員)の海上輸送を規制するため、防衛出動を命ぜられた海自の部隊が実施する停船検査
9及び回航措置
10の手続並びに防衛庁に設置する外国軍用品審判所における審判の手続などを規定している
11。
(2)捕虜取扱い法
武力攻撃事態における捕虜などの拘束、抑留その他の取扱いに関し必要な事項を定めることにより、武力攻撃を排除するために必要な自衛隊の行動が円滑かつ効果的に実施されるようにするとともに、武力攻撃事態において捕虜の待遇に関する1949年8月12日のジュネーヴ条約その他の捕虜などの取扱いに係る国際人道法の的確な実施を確保することを目的として、武力攻撃事態における捕虜などの拘束及び抑留資格認定の手続き、捕虜収容所における抑留及び処遇並びに送還などに関し必要な事項を規定している。
(3)国際人道法違反処罰法
国際的な武力紛争において適用される国際人道法に規定する重大な違反行為を処罰することにより、刑法などによる処罰とあいまって、これらの国際人道法の的確な実施の確保に資することを目的としている。
具体的には、1)重要な文化財を破壊する罪、2)捕虜の送還を遅延させる罪、3)占領地域に移送する罪、4)文民の出国などを妨げる罪に係る罰則規定を設けるとともに、5)これらの罪及びジュネーヴ諸条約が規定している「重大な違反行為」について、国外犯の処罰を可能とするための所要の規定を設けている。
(4)自衛隊法の一部改正(
ACSA関連)
日米物品役務相互提供協定(
ACSA:Acquisition and Cross-Servicing Agreement)の改正に伴い、災害派遣、周辺事態対処における在外邦人などの輸送などを米軍と協力して実施する際、自衛隊側から物品・役務を提供する場合の根拠及びその手続きなどについて自衛隊法上必要な改正を実施したものである。
(5)国民保護法
武力攻撃事態等において武力攻撃から国民の生命、身体及び財産を保護し、並びに武力攻撃の国民生活及び国民経済に及ぼす影響が最小となるようにすることの重要性にかんがみ、これらの事項に関し、国、地方公共団体などの責務、国民の協力、住民の避難に関する措置、避難住民などの救援に関する措置、武力攻撃災害
12への対処に関する措置その他の必要な事項を定めることにより、武力攻撃事態対処法とあいまって国全体として万全の態勢を整備し、もって武力攻撃事態等における国民の保護のための措置を的確かつ迅速に実施することを目的としている。(国民の保護に関する自衛隊の活動については後述)
(6)米軍行動関連措置法
武力攻撃事態等において、日米安保条約にしたがって武力攻撃を排除するために必要なアメリカ合衆国の軍隊の行動が円滑かつ効果的に実施されるための措置その他の当該行動に伴いわが国が実施する措置について定めることにより、わが国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に資することを目的としている。
(7)特定公共施設利用法
武力攻撃事態等における特定公共施設等(港湾施設、飛行場施設、道路、海域、空域及び電波)の利用に関し、指針の策定その他の必要な事項を定めることにより、その総合的な調整を図り、もって対処措置等
13の的確かつ迅速な実施を図ることを目的としている。
(8)日米物品役務相互提供協定(
ACSA)の一部改正
自衛隊と合衆国軍隊との間の緊密な協力関係を促進し、もって日米安保体制の円滑かつ効果的な運用及び国連を中心とする国際平和のための努力などに寄与することを目的として、武力攻撃事態又は武力攻撃予測事態に際して、わが国に対する武力攻撃を排除するために必要な活動、国際の平和及び安全に寄与するための国際社会の努力の促進、大規模災害への対処その他の目的のための活動にも適用し得るよう日米物品役務相互提供協定の適用範囲を拡大したものである。
(9)ジュネーヴ諸条約
14第1追加議定書
15
国際的な武力紛争について、1949年のジュネーヴ諸条約の内容を補完・拡充するものとして77(昭和52)年に作成されたものである。
具体的には、1)ジュネーヴ諸条約及び本追加議定書を締約国間の武力紛争や占領に加え、いわゆる民族解放戦争にも適用すること、2)傷病者、医療組織などに与えられる保護を軍人・軍用物に限定せずに文民・民用物に拡大すること、3)戦闘の方法及び手段の規制(無用の苦痛を与える兵器の使用禁止など)に関すること、4)敵対行為による影響から住民を保護・援助するための「文民保護」の任務に対する保護に関すること、5)国際的な武力紛争に際して行われる非人道的な行為を処罰するため、「重大な違反行為」を追加・拡大すること、などを規定している。
(10)ジュネーヴ諸条約第2追加議定書
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非国際的な武力紛争(いわゆる内乱など)について、ジュネーヴ諸条約共通第3条の内容を補完・拡充するものとして77(同52)年に作成されたものである。
具体的には、1)敵対行為に直接参加していない者への人道的待遇や、傷病者、医療要員などの保護に関すること、2)軍事行動から生ずる危険から住民を保護するため、住民に対する攻撃の禁止や、住民の生存に不可欠な物(食糧など)に対する保護に関すること、などを規定している。
9)外国軍用品等を輸送しているかどうかを確かめるため、船舶の進行を停止させて立入検査をし、又は乗組員及び旅客に対して必要な質問をすること
10)停船検査を行った船舶の船長などに対し、わが国の港へ回航すべき旨を命じ、当該命令の履行を確保するために必要な監督をすること
11)「憲法との関係」
本法律に基づく海上輸送規制措置は、自衛権の行使に伴う必要最小限度の範囲内のものであり、憲法の禁ずる交戦権の行使には当たらない。
12)武力攻撃により直接又は間接に生ずる人の死亡又は負傷、火事、爆発、放射性物質の放出その他の人的又は物的災害
13)1)武力攻撃を排除するために必要な自衛隊が実施する武力の行使、部隊などの展開その他の行動、2)1)に掲げる自衛隊の行動及び武力攻撃事態等において日米安保条約にしたがって武力攻撃を排除するために必要な行動を実施しているアメリカ合衆国の軍隊の行動が円滑かつ効果的に行われるために実施する物品、施設又は役務の提供その他の措置、3)対処基本方針が定められてから廃止されるまでの間にアメリカ合衆国の軍隊が実施する日米安保条約にしたがって武力攻撃を排除するために必要な行動及び4)国民の保護のための措置
14)ジュネーヴ諸条約は、
1)戦地にある軍隊の傷者及び病者の状態の改善に関する1949年8月12日のジュネーヴ条約(第1条約)、
2)海上にある軍隊の傷者、病者及び難船者の状態の改善に関する1949年8月12日のジュネーヴ条約(第2条約)、
3)捕虜の待遇に関する1949年8月12日のジュネーヴ条約(第3条約)、
4)戦時における文民の保護に関する1949年8月12日のジュネーヴ条約(第4条約)、からなる。
15)78(昭和53)年発効、昨年度末現在の締約国は162か国
16)78(昭和53)年発効、昨年度末現在の締約国は157か国