第3章 新たな脅威や多様な事態への実効的な対応と本格的な侵略事態への備え 

領水内潜没潜水艦の追尾に従事した隊員の声

 昨年11月、わが国の領海内を潜没航行した国籍不明の潜水艦(後に、中国の原子力潜水艦と判明)に対して発せられた海上警備行動に従事した護衛艦の乗員及び哨戒機(P-3C)の搭乗員に聞きました。

 
護衛艦 整備士 2等海尉 白石 俊彦

 
護衛艦 船務科電測員 2等海曹 江藤 良一

 
哨戒機(P-3C)機長(操縦士) 1等海尉 今村 元彦

Q1:本任務に従事して良かったことについて

 白石2尉:「自衛隊発足以来2度目の海上警備行動に、艦載哨戒ヘリコプターの整備指揮官補佐として従事できたことは、非常に貴重な経験になりました。私たちは、このような『万が一』に備えて日々訓練に励んでいるので、その成果を発揮し、航空機の整備を通じて潜水艦の追尾に寄与できたことは、今後の任務を遂行する上で大きな自信となりました。国家の主権を侵害する不法行為に対し、海上自衛官として毅然と対応できたことを誇りに思います。」
 江藤2曹:「最初は大変緊張した状態で任務に臨みました。艦載哨戒ヘリコプターが、私の管制でソーナーを降ろした時には探知できるかどうか不安でしたが、探知報告を聞いた時にはホッとしたとともに自信も湧いてきました。任務を完遂したことで、わが国の威信を示すことができたと思います。日頃の訓練の成果を十分発揮できたことに誇りを感じるとともに、海自隊員として果たすべき責任をあらためて実感しました。」
 今村1尉:「普段の訓練の積み重ねにより、機長としてクルー(各搭乗員)の技量を信じ、自信を持って任務を遂行できたこと、またこの任務を通してクルー間の心の団結が一層強化されたことに喜びを感じています。さらには、わが国の対潜能力の高さと、国の安全に貢献できたことに対し、誇りを持つことができました。」

Q2:本任務で苦労したことなどについて

 白石2尉:「航空機の整備は、搭乗員の生命に直接係わる仕事であることは言うまでもありませんが、艦載哨戒ヘリコプターは対潜任務で非常に重要な役割を担っており、任務継続のためには迅速かつ確実な整備作業が要求されます。本行動では、今まで感じていたこれらの緊張感に加え、実任務としての潜水艦の追尾であったことから、同じ作業にも関わらず、通常より格段に大きく疲労しました。」
 江藤2曹:「潜水艦という目に見えない相手を追尾するという任務でもあり、目標の動静など、様々な可能性を常に考えながら管制を行っていたので、緊張の連続でした。」
 今村1尉:「国籍不明潜水艦の追尾という通常の訓練飛行などとは異なった緊張感の中、航空機を操縦しつつクルーを指揮し、機長としての要務処理を行うことは、非常に厳しいものがありました。機長としては、目標追尾中に生起する可能性のあるあらゆること、例えば捕捉中の目標を失探したときのことや、特異な動きがあったときのことなどを常に考慮しておく必要があります。」

Q3:行動中のエピソードなど

 白石2尉:「肉体的にも精神的にも厳しい条件下での作業が続き、各隊員の疲労は時間の経過とともに増加しましたが、年配の隊員も若い隊員も積極的に声を掛け合い、確実に作業を実施しようという雰囲気が醸成され、従来にも増してチームワークを強固にすることができました。」
 江藤2曹:「潜没航行する潜水艦を追尾中、艦内の空気から、任務に対する各配置の真剣な取組が感じられました。また、見張り員などからの報告がある度に、艦内に緊張が走りました。」

 

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