国連平和維持活動(
PKO:Peace-keeping Operations)
(1)冷戦後の
PKO
PKOは、伝統的には、停戦の合意が成立した後に、停戦監視などを中心として、紛争の再発防止を主たる目的として行われてきた。このような活動を行う中で、紛争当事者間で停戦の合意があること、紛争当事者の受け入れ同意があること、中立性を保つこと、武器の使用は自衛の場合に限ることなどの原則が慣行として確立した。
冷戦の終結により、地域紛争の処理や予防に関して、国連安全保障理事会(安保理)を中心とする国連の役割に対する期待が高まるとともに、国際社会が対応を迫られる紛争の多くが国家間の紛争から一国内における紛争へと変わった結果、
PKOの任務は、武装解除の監視、選挙や行政監視、難民帰還などの人道支援など、文民の活動を含む幅広い分野にわたるようになり、活動の規模も拡大した。また、国連憲章第7章の下で、武装解除などに関し強制措置をとり得るとされる活動や、紛争を未然に防止する目的を持った活動も行われるようになった
1。
(2)
PKOの課題と国連・関係国による対応
PKOは、要員や機材の確保の問題、要員の安全確保の問題
2に加え、関係国間の利害対立により対応策の合意が必ずしも形成されないことなど多くの課題を抱えており、国連と関係国は、これらの課題に対する方策について議論を行ってきた。
00(平成12)年8月には、国連平和活動検討パネルが、紛争予防、平和維持、平和構築からなる一連の平和活動を国連がより効率的、実効的に行えるよう、様々な角度から勧告する報告書(いわゆるブラヒミ報告書)を公表した
3。報告書の勧告には、要員派遣国との協力強化を図る協議、
PKO局の人員増強などが含まれていた。これらを受けて、安保理などで審議が行われ、
PKOの迅速な展開を可能にするための国連待機制度に03(同15)年7月現在で80か国が参加するなどの成果が現れている。
昨年、国連ハイレベル委員会が公表した「より安全な世界、我々が共有する責任(A more secure world:Our shared responsibility)」においても、加盟国に対し、ブラヒミ報告書に基づく
PKO局の取組を支援するよう求めている。
1)国連カンボジア暫定機構(
UNTAC)や国連モザンビーク活動(
ONUMOZ)は、軍事部門と文民部門に及ぶ様々な任務を成功させて活動を終了した。他方、強制行動を行う権限を与えられた第2次国連ソマリア活動(UNOSOMII)は所期の目的を達成することなく撤収した。また、ボスニア・ヘルツェゴビナのスレブレニツァやルワンダでは、国連が関与したにもかかわらず、国際社会が十分な対応をしなかったため、民族浄化や、市民の大量殺害を防ぐことができなかった。他方で、いわゆる伝統的な
PKOも引き続き重要な役割を果たしている。00(平成12)年に設立された国連エチオピア・エリトリア・ミッション(UNMEE)は、二国間の停戦合意の監視などを任務とする
PKOである。