第6章 今後の防衛庁・自衛隊のあり方 


解説 武器輸出三原則等と国際的な武器共同開発

 わが国は、国際紛争などを助長することを回避するという平和国家としての基本理念に基づいた武器輸出三原則等により、武器輸出について慎重に対処してきた。この武器輸出三原則は、67(昭和42)年、佐藤総理大臣が国会で表明したものであり、その内容は、1)共産圏諸国、2)国連決議により武器等の輸出が禁止されている国、3)国際紛争当事国又はそのおそれのある国に対しては武器輸出は認めないというものであった。その後、76(同51)年、三木総理大臣が、「武器輸出についての政府統一見解」を国会で発表し、三原則対象地域以外の国についても武器輸出を「慎む」として、以後武器は原則輸出禁止とされてきた。また、83(同58)年、中曽根内閣の時に、内閣官房長官談話を発表し、防衛分野における米国との技術の相互交流を図ることが日米安保体制の効果的運用を確保する上で極めて重要になっていることなどにかんがみ、米国に対する武器技術の供与に限っては、武器輸出三原則等の例外としたが、武器そのものの対米輸出については、従来どおり武器輸出三原則等により対処することとしたため、わが国からの武器の輸出を前提とした武器の国際共同開発・生産にわが国は参加することができない。

 一方、開発・生産に高度な技術を必要とする武器については、一国だけで開発することが困難となっている。このため、現在開発中の戦闘機F-35(JSF:Joint Strike Fighter)1や短・中距離の弾道ミサイルなどを迎撃することを目的とした中距離拡大防空システム(MEADS:Medium Extended Air Defense System)2などに見られるように、欧米諸国では防衛産業間の国内的・国際的な協力を行い、できるだけ高性能な兵器を開発・生産するよう努力している。このような武器の国際的な共同開発・生産は、世界的な趨勢(すうせい)となっている。

 現在、日米間ではBMDに関する日米共同技術研究を行っているところであるが、本研究がその成果を活用した共同開発・生産に移行する場合には、わが国から米国に武器を輸出する必要性が生じる。このような課題が存在することを踏まえ、武器輸出三原則等については、国際紛争などを助長することを回避するという平和国家としての基本理念に立ちつつ、各般の観点から検討していくこととしている。



 
1)米・英・イタリア・オランダ・トルコ・カナダ・オーストラリア・ノルウェー・デンマーク・イスラエル・シンガポールの11か国が共同開発に参加又は参加を予定している(開発費への出資額はいろいろなレベルに分かれている。)。

 
2)米・ドイツ・イタリアの3か国が共同開発中


 

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