第5章 国民と防衛庁・自衛隊 


国民の自衛隊・防衛問題に対する意識の変遷

 わが国の防衛は、自衛隊のみで果たせるものではなく、広く国民的基盤に立ち、国民各層の理解と支持があって初めて成り立つものである。このような観点から、わが国の防衛を考える上で、自衛隊・防衛問題に関する国民の意識動向を把握するとともに、防衛施策の推進にあたっても、広く国民の理解を求めていく必要がある。
 内閣府は、これまで自衛隊や防衛問題に関する世論調査を行ってきており、これにより、時代の変遷に伴う国民意識の推移を伺い知ることができる。ここでは、これまでの調査結果をもとに国民の自衛隊・防衛問題に関する意識の変遷を紹介する。

自衛隊の必要性
 自衛隊の必要性については、「あった方がよい」と答えた者の割合は、自衛隊発足間もない56(昭和31)年調査の6割弱から増加し、66(同41)年調査では8割を超えた。その後、一時期7割台に減少したものの、75(同50)年以降は8割台の高水準で推移した。この結果から、災害派遣などの各種活動を通じ、国民の大多数が自衛隊の存在を必要なものと考えるようになったことが読み取れる。なお、84(同59)年の調査を最後に本質問は設けられていない。

(注)昭和31年〜同38年の調査では、「あった方がよい」には「あった方がよい」と「あっても良い」を含み、「ない方がよい」には「ない方がよい」と「なくてもよい」を含む。
 
自衛隊の必要性

防衛費の規模
 「今の程度でよい」と回答した者の割合が、69(同44)年の調査開始時の約4割から増加を続けており、88(同63)年の調査以降は、多少の増減はあるものの、全体の約6 割を占めている。この結果から、これまでのわが国の防衛力整備について、広く国民の理解が得られ、支持されているものと考えることができる。
 
防衛費の規模

日本の安全を守るための方法
 これまで、わが国は、自ら適切な規模の防衛力を保有するとともに、日米安全保障体制を堅持することを、防衛政策の基本としてきたところである。「日本の安全を守るためにはどのような方法をとるべきか」との問いに対して、「現状どおり日米の安全保障体制と自衛隊で日本の安全を守る」と回答した者の割合が、69(同44)年の調査開始時の約4割から着実に増加し、03(平成14)年の調査からは7割を超えている。このことは、国民の大多数がわが国の基本的な防衛政策を支持していることを表しているといえる。
 
日本の安全を守るための方法

日本が戦争に巻き込まれる危険性
 「日本が戦争に巻き込まれる危険性があると思うか」との問いに対しては、69(昭和44)年の調査開始から、「危険がある」「危険がないことはない」「危険はない」と答えた者の割合が、それぞれ1〜4割台で増減を繰り返していたが、00(平成12)年の調査以降は、「危険がある」「危険がないことはない」と答えた者の割合が急増し、03(同15)年の調査では、8割にも達している。これらは、98(同10)年の北朝鮮ミサイル発射事案、99(同11)年の能登半島沖不審船事案、01(同13)年の米国における同時多発テロ、さらには、昨年来の北朝鮮の核兵器開発問題を含む安全保障上の問題などが影響しているものと考えられる。防衛庁・自衛隊としても、わが国への武力攻撃のみならず、このような不測の事態に対して、より適切に対応できる態勢を平素から構築することに努めているところである。
 
日本が戦争に巻き込まれる危険性


 

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