第4章 国際社会の平和と安全を確保するための取組 

2 東ティモール国際平和協力業務などへの参加

東ティモール国際平和協力業務

(1)東ティモール独立の経緯
 東ティモールでは、74(昭和49)年、16世紀以降続いたポルトガルの植民地支配が終了後、東ティモール完全独立を目指す独立派とインドネシアへの統合を希望する統合派との間の闘争が激化した後、76(同51)年、インドネシアに併合された。しかしながら、併合後も独立派は、インドネシアへの併合は住民の意思を無視したものであるとして、ゲリラ活動を続けていた。99(平成11)年8月、東ティモールに広範な自治を認めるというインドネシア政府の提案について、その受け入れを問う東ティモール人による直接投票が行われ、自治案拒否(独立賛成)が多数を占める結果となった。しかし、その結果に不満を持つ統合派武装組織によって起こされた騒乱により再び治安が悪化し、これを受けて、国連安全保障理事会決議(安保理決議)に基づき、オーストラリア軍を中心とした多国籍軍(東ティモール国際軍(INTERFET)):International Force in East Timorが展開し、治安の回復に当たった。同年10月には、インドネシアの国民協議会が、東ティモールの同国からの分離を認める決定を採択した。同月、安保理決議により、独立までの全般的統治、平和と治安の維持を任務とする国連東ティモール暫定行政機構(UNTAET):United Nations Transitional Administration in East Timorが設立された。その後、平和と安全が回復されたことを受け、00(同12)年2月、INTERFETの任務は、UNTAETの軍事部門へ引き継がれた。UNTAETの下で、02(同14)年4月、大統領選が行われ、同年5月20日に東ティモールは正式に独立した。
 なお、東ティモールの独立に伴いUNTAETはその任務を終了し、新たな安保理決議を受け、国連東ティモール支援団1UNMISET):United Nations Mission of Support in East Timorが設立された。
 
UNMISETの概要

(2)自衛隊の活動
 わが国は、UNTAETが行う国連平和維持活動への参加に関し、国連からの要請を受け、02(同14)年2月から自衛隊の部隊などを派遣した。
 同年3月から、陸自で編成された第1次派遣施設群680名は、同年9月までの約7か月間、第2次派遣施設群680名は昨年3月までの約6か月間、第3次派遣施設群522名は同年10月までの約7か月間、第4次派遣施設群405名は本年6月までの約8か月間、それぞれ道路・橋などの維持補修など後方支援分野の業務を実施し、本年5月、国連の活動が大幅に縮小されたことから、これに伴いわが国も本年6月をもってその活動を終了することとなった。
 本活動は、自衛隊の行った国際平和協力業務における過去最大の人員派遣であり、また、初めて女性自衛官が派遣された。なお、派遣にあたっては、統合幕僚会議が輸送にかかわる調整を行い、海自の輸送艦、空自の輸送機などが、人員・資器材の輸送と補給支援を行った(たとえば空自の場合、輸送機を半年に1回の割合で派遣)。
 派遣施設群は、道路・橋などの維持補修に加え、民生支援として小学校のグランドの敷地造成などを行い、また、現地住民との交流を活発に行うなど、わが国と東ティモールとの友好関係の構築に貢献した。また、オクシ地区に駐屯する韓国陸軍との交流も積極的に行い、自衛隊主催の演奏会への招待、韓国陸軍の貨物の積み卸しの支援などを通じて、自衛隊と韓国陸軍との信頼関係の強化にも寄与した。
 
給水作業を行う女性自衛官 文化交流の一環として子供たちに音楽指導を行う隊員

 また、派遣施設群の交代時における規模の縮小と撤収に伴い、東ティモール政府からの要請に基づき、油圧ショベル、トラックなどの車両、資材運搬車などの施設器材や組立家屋などを譲与した。施設群は、以前から東ティモール政府関係者に対して、施設作業を実施するために必要な施設器材の操作・整備などに関する教育を実施してきた。この教育と併せて施設器材を贈与したことにより、東ティモールの国民自らが道路などの社会基盤の整備や災害時の復旧作業に取り組むための基礎作りにも寄与した。
 なお、UNMISET軍事部門司令部には、司令部要員として自衛官のべ17名が派遣され、施設業務の企画調整、後方支援業務の調整などの任務を行った。
 東ティモールは、1年を通じて高温・多湿であり、また、派遣施設群は複数の地域に分かれて活動し、宿営地も異なるなど、業務実施上様々な制約を受けていたが、東ティモール復興に向けた住民の活動を支援するため、各隊員は、旺盛な責任感をもって業務を実施した。今回の活動を通じ、自衛官の高い規律心・責任感、高い作業能力、統制ある行動は、現地の住民、国連、諸外国のUNMISET参加部隊などからも高く評価された。
 
グスマン・東ティモール大統領(右)と会談する浜田副長官(左)
 
第4次東ティモール派遣施設群の編成



 
1)UNTAETの後継のPKOで、東ティモールの国造りに対する協力を任務とする。02(平成14)年5月17日の国連安保理決議第1410号の採択により設立された。


 

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