第4章 国際社会の平和と安全を確保するための取組 


紹介 米中央軍司令部に連絡官として勤務した隊員から見たコアリション(有志連合)

 02(平成14)年11月から昨年5月まで米中央軍司令部に連絡官として勤務した大塚1佐に、「コアリション(有志連合)」について聞きました。
 
1等海佐 大塚 海夫

 「コアリション」を理解するためには、日米同盟に代表される「同盟」と比較すると分かりやすいと思います。「同盟」は、一般に、1)条約に基づき長期にわたり作られた固定的な枠組みであり、2)国家間の共通の価値観に立脚した幅広い利益を共有し、3)条約に基づく法的な権利・義務関係の当事者となることを基本とします。一方、「コアリション」は、1)特定の任務や目的のために一時的に形成された柔軟な枠組みであり、2)国家間で共通する利益の幅は狭く、3)法的な権利・義務関係に制約されない自主的な参加が前提となります。一般的に、同盟国の間では、強固かつ安定した信頼関係が保たれている場合が多いものの、今後、「コアリション」の活動が積み重なっていくと、その実績が同盟関係そのものや参加国との協力関係に影響を及ぼす可能性が出てくるかもしれません。

 「コアリション」は、参加国が自主的に協力する枠組みですから、よい仕事をすればするだけの評価が得られます。その結果は、多数の参加国からの信頼を勝ち得ることに繋がると同時に、テロとの闘いやイラクへの対応について「コアリション」の中心となっている米国との信頼関係がより一層高まるという効果ももたらします。イラクに対する軍事作戦開始直前の、「日米同盟と国際協調を両立させる」との小泉総理の発言は、まさに「コアリション」に参加することで具現化されたと、現地において肌で感じることができました。

 わが国とこのような「コアリション」との関わりは、わが国を含む国際社会の平和と安定の確保のためにいかなる役割を果たすべきかという観点からも、また、日本の安全保障政策の重要な要素である日米同盟の将来にとっても重要な影響を及ぼす問題であると思います。


 

前の項目に戻る     次の項目に進む