第4章 国際社会の平和と安全を確保するための取組 


紹介 米中央軍司令部連絡官として勤務する隊員の声

 02(平成14)年8月以降、統幕事務局から米国フロリダ州タンパに所在する米中央軍司令部に、連絡官として自衛官が派遣されている。連絡官は、テロ対策特措法やイラク人道復興支援特措法などに基づく防衛庁・自衛隊の任務の遂行に必要な調査を行うため派遣されており、テロとの闘いが行われているアフガニスタン、インド洋、イラクを含む米中央軍管轄地域にかかわる軍事情勢などの情報収集や自衛隊の活動にかかわる米軍などとの調整を行っている。
 現在派遣されている陸・海・空自衛官計3名に聞きました。
 
1等陸佐 山田伊智郎(左)
 
2等空佐 尾崎義典 *尾崎2佐は、本年4月30日任務を終え帰国

Q1:本任務に従事して良かった事について
 山田1佐:「日本が世界の中で大きな貢献をしていることが実感でき、日本を誇らしく思いました。また、コアリション(有志連合)による活動の場へ来て、日本では気づかなかったことが、たくさん見えてきました。たとえば、NATOに関しては、アジアの中の日本にいてはその重要性が実感として認識できませんでしたが、ここにくると、その存在感が極めて大きく国際社会におけるヨーロッパの重要性やアメリカとヨーロッパの絆の強さを再認識しました。このように、新しい発見が多くあり視野が広がった点がこの勤務に従事して良かったと思うことです。」
 伊藤2佐:「海軍関係者の中では、99(同11)年頃から、次世紀はコアリションによる活動の時代だという考えが共有され始めていました。そのコンセプトは、米国における同時多発テロという不幸な事件以降行われている「テロとの闘い」に関連し、ここタンパの中央軍司令部で具現化してきています。このような軍事、あるいは安全保障における協力関係に関する時代のトレンドの真っただ中に身をおき、日本の代表として、60か国以上にわたる諸外国の軍人たちとテロ撲滅のために、共に歩むことができることは海上自衛官として望外の喜びと感じています。」
 尾崎2佐:「国内の勤務ではとうてい得ることの出来ない経験をし、視野を広げることが出来た点です。」

Q2:本任務で苦労したことについて
 伊藤2佐:「米国留学の経験はありましたが、60か国以上の国々の代表が60数種類の英語(いわゆるお国訛り)を話す上に、共に勤務している米軍人の多くは予備役であり、米全土から召集されているため、各地方の訛り(特に、アラバマなど南部の訛りはきつい)に慣れるために、しばらく時間がかかりました。」
 尾崎2佐:「コアリションの各国が自衛隊の早期派遣を望む中、なかなか明確な形で派遣の意思表明が出来なかったり、外国のメディアによる『日本は派遣をあきらめた』という報道がなされたときは非常に苦しい立場に追い込まれました。しかしながら、私の前任者達が築いた強固な人間関係やねばり強いコミュニケーションにより理解を得ることが出来たと感じています。」
 
対テロ作戦に従事している諸外国の艦艇と海自派遣部隊(本年5月)

Q3:派遣中のエピソードについて
 山田1佐:「迷彩服(日の丸付き)を着て、スーパーで買い物中に、『我々を助けてくれてありがとう』と握手を求められました。」
 尾崎2佐:「各国のわが国への対応は極めて暖かいと感じました。わが国がこれまで、脈々と築いてきた各国との信頼関係の強さを感じています。わが国が正式にコミットメントを発表したときはわざわざ我々のオフィスまでお祝いを言いに来る国がたくさんありました。また、空自のC-130輸送機がクウェートに到着する日には、スペイン代表の准将がスペイン軍のC-130輸送機をあしらった記念品を持ってきてくれました。コアリション各国の代表は多くが慣れない土地での単身生活を余儀なくされており、それゆえに強い絆で結ばれています。」


 

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