第4章 国際社会の平和と安全を確保するための取組 


紹介 インド洋で対テロ支援活動に従事する海自隊員の声

 昨年10月28日から本年4月22日までの178日間、テロ対策特措法に基づく補給支援活動に従事した補給艦「ときわ」で勤務している隊員に聞きました。
 
通信士 2等海尉 奥村 健二 船務科電測員 1等海曹 三浦 徹 機関科応急工作員 3等海曹 小塚 朋幸

Q1:本任務に従事して良かった事について
 奥村2尉:「洋上給油中、補給艦と受給艦は約40mの間隔で給油ホースが繋がったまま並走しますが、その際互いの国旗を掲げ、手旗などでメッセージを交換し、親交を深めています。受給艦から感謝のメッセージや「みんなで食べて下さい」と手作りのお菓子などが届くこともあります。そんなときは我々の活動が必要とされ、感謝され、また友好親善にも役立っていると感じ、この任務に従事して良かったと実感します。各国海軍と協力して作業を実施しているという連帯感があり、非常にやりがいを感じています。」
 三浦1曹:「日本も国際社会の一員として、世界の平和安定に経済的にだけではなく、直接顔を見せ、汗をかき、貢献しています。これは国際社会に日本、さらには海上自衛隊の存在をアピールし、国際社会の一員として責任を果たす大変よい機会だと思います。私個人としても今回のインド洋派遣任務に参加し、この国際貢献にわずかでも役立つことができて、海上自衛官として日本人としてとても誇りに思います。」
 小塚3曹:「半年にも及ぶ長期行動を無事に終えて、母港である横須賀に寄港した時の喜びは言葉では表現できないものがありました。あの時の感動が忘れられず2回目の派遣に参加しています。」

Q2:本任務で苦労したことについて
 奥村2尉:「支援活動のスケジュールが頻繁に変わることです。調整のついた予定が急遽キャンセルになったり、突然依頼が舞い込んだりすることは幾度もあり、その度に再調整に奔走しました。常に変化する情勢の中で柔軟に問題に対処していく能力こそ自衛隊にとって必要不可欠なものであり、ここでの経験は今後の私にとって有意義なものになると信じています。」
 三浦1曹:「一番大変だったのは先任海曹室の一員として艦全体の雰囲気を良好に保つことでした。任務行動も長期間になると皆ストレスが溜まり、情緒不安定になる者や些細なことで言い争いを起こす者も出てきて、個々に見れば小さなことでも積み重なれば、艦全体の雰囲気を悪くします。そうなると艦の任務遂行にも支障をきたすことになるので、個人的には頻繁に話を聴いてやるとか、艦上体育や上陸に誘うとか、ビンゴ大会や腕相撲大会などの息抜きの行事を企画したりして、艦全体の良い雰囲気を保つのに努めました。」
 小塚3曹:「インド洋独特の蒸し暑さ。この一言につきます。特に日中の洋上給油は湿度80%、気温は40℃を越す炎天下での作業となり照りつける日差しは容赦なく我々の体力、精神力を削っていき、作業効率も低下していきます。常日頃から体力練成に努め、体力には自信のある私ですが常識をはるかに越えるインド洋での暑さには苦労しています。」
 
艦上体育を行う隊員

Q3:派遣中のエピソードについて
 奥村2尉:「何度か洋上給油をしたカナダ艦の女性士官とメール友達になり、意見を交換し合いました。未熟さからくる若手幹部ならではの失敗談や悩みを抱えているところや、慣れない環境下での任務に不安を感じながらも各国海軍との共同作戦に連帯感ややりがいを感じているところなど、国は異なれど思いは同じだと分かり嬉しく思いました。」
 三浦1曹:「私の職種である電測員は無線通信による他艦との交話も職務の一つです。米英だけではなく各国の艦艇を相手にしているため、交話は全部英語ですることになっていますが、各国で微妙に発音や言い方が違うため、我々日本を始めとして、いろんな英語?が飛び交いコミニュケーションするのに苦労しました。しかし、色々な国の艦艇と何回も交話するうちに、同じ英語でもその国風の特徴がわかって、交話の英語を聞くだけで国が大体わかるようになり面白かったです。」
 小塚3曹:「航海中、日常の生活では体験できない事が数多くあります。イルカの大群が艦の周りを取り囲み、併走したり、夜、夜光虫が艦の作る波に反応して光り、まるで海にオーロラが映っているような、幻想的な世界を作り出したり、月食の時の星空は、日本にいたら絶対に体験できないと思います。忙しい業務の合間に見られる自然の素晴らしさが私にとって気分転換につながっています。」


 

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