第4章 国際社会の平和と安全を確保するための取組 


Q&A イラク復興支援

Q1 「非戦闘地域」とは何ですか。

A イラク人道復興支援特措法は、自衛隊などが活動する地域について、「現に戦闘行為(国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為をいう。以下同じ。)が行われておらず、かつ、そこで実施する活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる」地域との要件を満たすことを求めていますが、この地域のことをいわゆる「非戦闘地域」と呼んでいます。(第2条3項)

 また、ある行為が、法律にいう戦闘行為に当たるか否かは、当該行為が国又は国に準ずる組織の間において生ずる武力を用いた争いの一環として行われているものか否かによって決められます。
 具体的には、自衛隊などによる活動が、このようないわゆる「非戦闘地域」の要件を満たした地域で行われているかどうかについては、その活動の具体的内容を踏まえて、わが国が独自に収集した情報、諸外国などから得た情報などを総合的に分析し、活動期間中の状況変化の可能性なども含め、合理的に判断することになります。
 なお、このいわゆる「非戦闘地域」という枠組み自体は、あくまでもわが国の活動が憲法第9条の趣旨に違反することがないようにすることを、制度的に担保するために設定したもので、その地域が危険であるか否かを判断するものではありませんが、いずれにせよ、自衛隊は安全の確保に十分配慮して活動しています。

Q2 イラクに対する武力行使の理由とされた「大量破壊兵器」はいまだに発見されていませんが、イラクに対する米国などの武力行使は、本当に正当なものだったといえるのですか。

A イラクはかつて実際に大量破壊兵器を使用しているほか、多くの大量破壊兵器に関する疑惑を有していました。そして、イラクから侵略されたクウェートを解放するために行われたいわゆる湾岸戦争の際、イラクは、安保理決議第687号に示されている停戦条件を受け入れることにより、大量破壊兵器を廃棄する義務を受け入れました。しかしながら、イラクは、査察への非協力により廃棄を証明せず、安保理決議第687号の重大な違反を犯してきました。

 このような状況を受け、安保理は、安保理決議第1441号において、イラクが安保理決議第687号を含む関連諸決議の義務の重大な違反を継続的に犯していることを決定し、イラクに対して関連安保理決議を履行する最後の機会を与えました。しかし、査察団による安保理への累次報告などにおいても明らかなとおり、安保理決議第1441号で履行を求められている武装解除などの義務がイラクによって完全に果たされておらず、さらなる重大な違反が生じていると言わざるを得ませんでした。

 このようなイラクの状況は、安保理決議第1441号の下、いわゆる湾岸戦争の停戦条件を定めた安保理決議第687号の重大な違反が継続的に生じていることから、いわゆる湾岸戦争の停戦の基礎が損なわれ、この地域における国際の平和と安全を回復するために「あらゆる必要な手段をとる」権限を国連加盟国に与える安保理決議第678号に基づき武力行使が正当化されるといえます。

 このように、今回のイラクに対する武力行使は、国際の平和と安全を回復するという目的のために武力行使を認める国連憲章第7章の下で採択された安保理決議第678、687及び1441号を含む関連安保理決議に合致し、国連憲章にのっとったものであり、正当なものであったといえます。

 なお、国連査察団の報告などにより指摘されている大量破壊兵器に関する疑惑は、今日に至るまで解消されておらず、イラクの大量破壊兵器については引き続き捜索が行われており、わが国としてもこれを注視していく考えです。


 

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