第2章 わが国の防衛政策 


防衛力整備の50年

 防衛力整備は、具体的な中期的見通しに立って、継続的かつ計画的に行うことが必要である。これは、国の防衛が国家存立の基盤であるとともに、装備品の研究開発や導入、基地などの施設整備、人の教育、部隊の訓練などには、長い年月を伴うからである。このため、防衛力整備の目標、方針などを定めた計画などが策定され、その下で、各年度の防衛力整備が行われてきている。
 
60(昭和35)年に就役した戦後初の国産潜水艦「おやしお」(1次防)
 
61(昭和36)年に調達を開始した戦後初の国産戦車「61式戦車」
 
62(昭和37)年に配備された「F-104J戦闘機」(2次防)

前大綱以前の時代(〜昭和51年度)
 前大綱策定以前(〜昭和51年度)においては、57(昭和32)年5月に閣議決定された「国防の基本方針」の下、3年又は5年を対象期間とする防衛力整備計画が4次にわたって策定され、計画期間中の整備方針、主要整備内容、整備数量などが示された。
 第1次防衛力整備計画は、昭和33年度から同35年度までの3か年計画として、国力国情に応じた必要最小限度の自衛力を整備するためのものとして策定された。昭和36年度以降については、第2次〜第4次防衛力整備計画が、それぞれ5か年計画で策定され、そこにおいては、通常兵器による局地戦以下の侵略に有効に対処することが防衛力整備の目標とされた。
 
71(昭和46)年に配備された「F-4EJ戦闘機」(3次防)
 
73(昭和48)年に就役したヘリコプター搭載護衛艦「はるな」(4次防)
 
74(昭和49)年に調達を開始した「74式戦車」(4次防)

前大綱から現大綱までの時代(昭和52年度〜平成7年度)
 第1次〜第4次防衛力整備計画の下、わが国の防衛力の基礎が築かれることとなったが、一方で、わが国の防衛力の充実が図られていくに伴い、「防衛力はどこまで増強されるのか」といった懸念が示されるに至った。
 このような状況において、わが国の防衛のあり方について、政府の考えをできる限り具体的に明示し、国民的合意の確立を目指すものとして、76(昭和51)年10月、「防衛計画の大綱」(前大綱)が策定された。前大綱においては、防衛力整備の基本的考え方として、わが国に対する軍事的脅威に直接対抗するよりも、自らが力の空白となってわが国周辺地域における不安定要因とならないよう、独立国としての必要最小限の基盤的防衛力を保有するという基盤的防衛力構想を取り入れるとともに、わが国が保有すべき防衛力について、防衛上必要な各種の機能を備え、後方支援体制を含めてその組織及び配備において、均衡のとれた態勢を保有することが主眼とされた。また、その別表においては、各自衛隊の基幹部隊、主要装備などにより保有すべき防衛力の具体的な規模が示された。前大綱は、その後約20年にわたり、防衛力整備の基本とされ、その間の防衛力整備においては、前大綱に示された防衛力の水準の達成を図ることが目標とされた。
 防衛力整備の計画の方式については、前大綱策定後しばらくの間は、各年度毎の弾力的な対処を可能にするとの考えの下、いわゆる単年度方式(昭和52年度〜同54年度)が採用されたが、昭和55年度以降は、可能な範囲で将来の方向を見定めておくことは、実際の業務を進める上で必要という考えの下、防衛庁限りの計画として5か年間の「中期業務見積り」(昭和55年度〜同60年度)が作成された。さらに、昭和61年度以降は、より適切な文民統制の充実を図る見地から、政府の責任において中期的な防衛力整備の方向を内容と経費の両面にわたって示すことが望ましいとの判断の下、政府計画として、中期防衛力整備計画(昭和61年度〜平成2年度:中期防)が策定された。
 
90(平成2)年に調達を開始した「90式戦車」
 
93(平成5)年に就役したイージス護衛艦「こんごう」

現大綱以後の時代(平成8年度〜)
 国際情勢の変化(ソ連邦の崩壊など)や自衛隊に対する期待の高まりなどを踏まえ、95(平成7)年、前大綱を見直し、「平成8年度以降に係る防衛計画の大綱」(現大綱)が策定された。現大綱においては、基盤的防衛力構想が基本的に踏襲されたが、わが国が保有すべき防衛力については、前述の環境の変化に対応するため、現行の防衛力の規模及び機能について見直しを行い、その合理化・効率化・コンパクト化を一層進めるとともに、機能の充実と質的な向上により、多様な事態に有効に対応し、事態の推移にも円滑に対応できるよう適切な弾力性を確保することが主眼とされた。防衛力整備の計画の方式については、従来どおり、大綱の下で進めていくことが望ましいとの判断の下、中期防衛力整備計画が2度にわたり策定された。
 
00(平成12)年に配備された「F-2支援戦闘機」

今後の防衛力整備
 冷戦崩壊後10年以上を経て、わが国に対する本格的な侵略事態生起の可能性は低下する一方、テロや大量破壊兵器の拡散の問題など、新たな脅威や平和と安全に影響を与える多様な事態への対応が差し迫った課題となってきている。こうした安全保障環境の変化を踏まえ、昨年12月19日、「弾道ミサイル防衛システムの整備等について」が閣議決定され、新たな防衛計画の大綱とその下での中期防衛力整備計画を本年中に策定することとされた。今後とも、防衛庁としては、国民の一層の理解と協力を得つつ、継続的かつ計画的な防衛力整備を行っていくことが必要であると考えている。


 

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