第5章 国民と防衛 

SACO最終報告の進捗(しんちょく)状況

 SACO最終報告の実施に取り組んできた結果、土地の返還については、安波(あは)訓練場、キャンプ桑江の一部(北側:約38ha)の返還が実現したほか、普天間飛行場の返還など8事案について地元の了解が得られ、その一部について移設工事を行っているなど、11事案のうち9事案が着実に進捗している。また、土地の返還以外の案件についても、そのほとんどが実現している。
 防衛庁は、今後とも沖縄県知事などの考えを十分に聞き、地元の理解と協力を得ながら、SACO最終報告の実現に向け、最大限の努力を払っていくこととしている。

(1)普天間飛行場の返還
 普天間飛行場は、市街地にあり危険であるとの沖縄県民の強い返還要請を出発点として、日米間で首脳レベルによる交渉を行った結果、県内に施設を移設し返還することを合意した。沖縄県知事は、代替施設の候補地の検討を続けてきた結果、99(同11)年、移設候補地を「キャンプ・シュワブ水域内名護(なご)市辺野古(へのこ)沿岸域」に決定した旨を表明し、名護市に理解と協力を要請した。これを受け、同年、名護市長が受入れを表明した。
 こうした中、沖縄県と地元からは、住民生活や自然環境への特別の配慮、代替施設の使用期限の設定、移設先と周辺地域の振興、沖縄県北部地域の振興と駐留軍用地跡地の利用促進などの要請が寄せられている。
 政府は、こうした経緯や要請を踏まえ、同年、「普天間飛行場の移設に係る政府方針」1を閣議決定し、今後の取組方針を明らかにした。
 この閣議決定に基づき、代替施設については、規模、工法、具体的建設場所など基本計画策定に必要な事項について、政府、沖縄県、地元地方公共団体との間で協議を行う「代替施設協議会」が00(同12)年設置され、基本計画の策定に向けて鋭意協議が進められた。その結果、昨年7月、「普天間飛行場代替施設の基本計画」が策定された。
 また、代替施設について、地域の住民生活と自然環境に著しい影響を及ぼすことのないよう最大限の努力を行いつつ、その円滑な建設を推進することを目的として、政府、沖縄県、地元地方公共団体との間で協議を行う「代替施設建設協議会」が、本年1月設置された。防衛庁は、普天間飛行場の移設・返還の早期実現に向け、「代替施設建設協議会」での議論も踏まえながら、環境影響評価をはじめとする所要の手続などを進め、代替施設の基本計画の着実な実施に取り組んでいく考えである。
 さらに、政府は、沖縄県や地元地方公共団体との間で「移設先及び周辺地域振興協議会」、「北部振興協議会」や「跡地対策協議会」を設置し、地域振興や跡地利用などについて、協議を行っている。

 
普天間飛行場代替施設の基本計画

(2)那覇港湾施設の返還
 那覇港湾施設の移設・返還について、移設予定地とされた浦添市では、01(同13)年11月、市長が移設受入れを表明した。これを受け、政府と地元地方公共団体との間に、「那覇港湾施設移設に関する協議会」(移設協議会)などを設置し、同港湾施設の移設・返還を円滑に推進するための協議を進めているところである。
 なお、同港湾施設の移設予定地である那覇港浦添埠頭地区を含む那覇港港湾計画の改訂が予定されていたことから、その作業との整合性を図るため、本年1月の第4回移設協議会において、防衛庁は、米側との調整状況を踏まえた代替施設の位置、形状案を説明した。これを受け、改訂港湾計画については、沖縄県などにおいて、代替施設を参考記載した上で、その存在を前提とした取りまとめが行われ、本年3月、改訂されたところである。
 防衛庁は、今後とも、同協議会などの場で、地元の意見を十分に聞きながら、移設・返還の実現に向けて取り組んでいくこととしている。

(3)北部訓練場のヘリコプター着陸帯の移設
 北部訓練場のヘリコプター着陸帯の移設について、関係する国頭(くにがみ)村と東(ひがし)村の理解が得られ、7か所のヘリコプター着陸帯の移設などの後、北部訓練場の過半を返還することを、99(同11)年の日米合同委員会で合意した。
 防衛庁は、沖縄本島北部の自然環境の保全に十分配慮するとの観点から、平成10年度から平成11年度にかけて、ヘリコプター着陸帯の移設候補地とその周辺などで環境調査を行った。その結果、この調査区域に、特記すべき種2が多数確認されたことから、より自然環境に与える影響が少ない移設先候補地の有無などを調査するため、環境調査を継続する必要があると判断し、昨年11月から新たな調査区域などで継続環境調査を実施している。
 ヘリコプター着陸帯の移設にあたっては、自然環境に与える影響を最小限にとどめるため、今後とも、環境省、沖縄県など関係機関との調整を図りつつ、適切に対応していくこととしている。

(4)県道104号線越え実弾射撃訓練の本土移転
 沖縄県道104号線越え実弾射撃訓練の分散・実施は、本土5演習場において、関係地方公共団体などの理解と協力を得て、平成9年度から行われている3。今後も防衛庁は、実弾射撃訓練が円滑にできるよう努力していくこととしている。

 
本土(矢臼別演習場)にて実弾射撃訓練を行う在日米軍(北海道矢臼別)



 
1)資料51参照。

 
2)国又は沖縄県指定の天然記念物と「改訂・日本の絶滅のおそれのある野生生物」(00(同12)年環境庁)又は「沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物」(96(同8)年沖縄県)などに記載されている種。

 
3)本年度は、7月に王城寺原(おうじょうじはら)、9月に矢臼別(やうすべつ)、11月中旬から12月中旬に北富士、来年2月に日出生台(ひじゅうだい)の各演習場で訓練が行われる予定である。


 

前の項目に戻る     次の項目に進む