第4章 より安定した安全保障環境の構築への貢献 


解説 東ティモールの国造りに対するさらなる貢献

 東ティモールPKOにおいて、わが国が派遣した施設群の隊員によって運用されてきた油圧ショベル3台や資材運搬車4台などの施設器材とプレハブ式建物88棟、発電機4個などが、わが国政府より東ティモール民主共和国政府に贈与された。その引渡のための式典が、本年3月13日、東ティモールの首都ディリにおいて行われ、防衛庁からは小島政務官が出席した。
 東ティモール政府からわが国政府に対しては、かねてより独立の過程で破壊された社会基盤の整備のために、施設器材など資器材の譲与の要請があった。わが国政府としても、この要請に応じることは東ティモールの経済社会開発と東ティモール国民の福祉増進のために極めて有意義であると考え、わが国の派遣部隊の規模を縮小するのに伴い、資器材の一部を贈与することとした。
 また、施設群は、以前から東ティモール政府の要請を受けたUNMISET軍事部門司令官の指図に基づき、東ティモール政府関係者に対して、協同で施設作業を実施するために必要な施設器材の操作・整備に関する教育を実施してきた。これまでに教育を修了した受講者は50名を超えている。本年3月から派遣されている第3次施設群以降においては、この教育を引続き実施することに加え、今回贈与された施設器材を使用して東ティモールの人々が実際に作業を行う際に、施設群から監督官などを派遣して東ティモールの国民自らが施設器材を使いこなし維持管理ができるよう支援している。
 しかし、このように施設群の支援が軌道に乗るまでには、多くの困難もあった。例えば言葉の違いである。教育は基本的に英語で行われたが、中には英語を必ずしも十分に理解しない受講生も含まれていた。そのため、「押す」「引く」などの、器材の操作に関係する基本的な用語については、例えば第1次施設群が派遣された際、部隊で現地の国語であるテトゥン語の用語集を作るなどして対応したほか、教育中は受講生同士で通訳をする場面も見られた。
 他方で、教育の回を重ねるにつれて教育の遅刻者が減るなど、教育を重ねていく中で受講生の熱意が一層増していったことは、特筆に値する。受講した技術者の器材操作は、前述した資器材贈与式の場などでも披露されたが、安全確認などの作業も含め正確かつ迅速であり、習熟度の高さが感じられるものであった。
 施設群は、これまで道路・橋などの維持・補修に加えて、積極的に民生支援にも取り組み、現地の住民と良好な関係を築いてきた。今回、施設器材の操作技術の教育と併せて施設器材の贈与を行ったことにより、将来にわたって、東ティモールの国民が自らの手で道路などの整備や災害時の復旧作業に取り組むための礎づくりにも貢献するものであると考えている。これは、わが国と東ティモールとの友好関係を強化する意味でも有意義であり、国連と東ティモールの関係者からも、高い評価と感謝の言葉が贈られている。

 
贈与した器材を使用して東ティモール政府が行った初めての施設作業

 
贈与することとなった施設器材の引渡し式典においてあいさつを行う小島政務官(本年3月 ディリ)


 

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