第4章 より安定した安全保障環境の構築への貢献 

ゴラン高原国際平和協力業務

 ゴラン高原の国連兵力引き離し監視隊(UNDOF:United Nations Disengagement Observer Force)1への参加は、停戦に合意した主権国家の間に設定された兵力引き離し地帯に展開している国連平和維持活動への参加であり、中東和平のための国際的努力に対するわが国の人的な協力としての意義を有する。
 政府は95(同7)年12月、自衛隊の部隊などによるUNDOFへの派遣を決定し、96(同8)年1月に、第1次ゴラン高原派遣輸送隊43名がカナダの輸送部隊と交代した。以来、約6か月交代で部隊を派遣している。

 
UNDOFの概要

 
ゴラン高原周辺図

(1)第14次隊の派遣
 陸上・海上・航空自衛官で編成された第14次派遣輸送隊(陸自主体の編成)43名は、第13次隊から任務を引き継ぎ、昨年8月から本年2月までの約7か月間、輸送業務などに従事した。
 この間、輸送した人員数は延べ約3,700人、物資輸送量は約900トン、走行距離は延べ約11万kmである。これらは、UNDOF司令部はもとより、現地政府からも高い評価を受けた。
 また、現地では、UNDOFが各種の競技会を主催しているが、派遣隊員は、業務の合間に練成に励み、特に、射撃競技会や車両競技会では優勝という成績を収めるなど、自衛官の高い能力を内外に示した。

(2)第15次隊の派遣
 第15次派遣輸送隊43名は、本年2月、第14次隊から任務を引き継ぎ、UNDOFの活動に必要な日常生活物資などの、イスラエル、シリア、レバノンの港湾、空港、市場などから各宿営地までの輸送や、道路の補修などの後方支援業務を行っている。派遣輸送隊は、現地でカナダ部隊などと同一宿営地に居住し、共同で隊員の給食などを行うなど、関係国との交流を深めている。
 さらに、空自は、派遣輸送隊に対する物資輸送のためC-130H輸送機を半年に一度の割合で派遣している。また、UNDOFの司令部要員として自衛官2名を派遣し、輸送などの後方支援分野に関する企画・調整やUNDOFの活動に関する広報や予算関連の業務を担当している。司令部要員は、おおむね1年ごとに交代しており、本年6月現在、第8次の司令部要員がUNDOFの司令部に派遣されている。今回の派遣では、海上自衛官がはじめて司令部要員として国連平和維持活動に参加した。
 UNDOFへの派遣期間は、当初、2年をめどとされていたが、国連からの強い要請、わが国要員の活動に対する国連や関係国からの高い評価、中東和平への人的協力の重要性などを考慮して総合的に検討した結果、これまで3度にわたり延長され、現在、04(同16)年2月までをめどとして派遣することとされている。

 
UNDOF宿営地まで水の輸送活動を実施中の15次隊(本年3月 ダマスカス北側サバダーニ)



 
1)シリア南西部のゴラン高原でイスラエルとシリア間の停戦監視と両軍の兵力引き離しなどに関する合意の履行状況の監視を任務としている。1974(昭和49)年に設立され、現在まで約28年にわたり活動を継続。


 

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