第4章 より安定した安全保障環境の構築への貢献 

様々な分野での活動

(1)モザンビークでの活動
 93(同5)年5月、陸上・海上・航空自衛官で編成された第1次モザンビーク派遣輸送調整中隊(陸自主体の編成)48名と、わが国初の司令部要員として陸上・航空自衛官からなる5名が、国連モザンビーク活動(ONUMOZ:United Nations Operation in Mozambique)による国連平和維持活動に参加した。
 輸送調整中隊の業務は主に空港でのものであり、具体的には、1)搭乗者の確認、文民の輸送調整部門への通報、2)搭乗者の空港到着からONUMOZ手配の車両までの誘導、3)物資などの確認と文民の輸送調整部門への通報、4)物資などの積みおろしの際の各種調整、などであった。輸送調整中隊の業務実績は、取扱い件数約1万2,100件、人員約11万9千名、貨物約1万2,100トンにのぼった。
 司令部要員は、ONUMOZ司令部の幕僚として、中長期的な業務計画の立案や輸送業務に関する企画・調整を行った。
 自衛隊の特性上、本来ならば生活面を含めた自己完結性のある活動をするところであるが、国連との調整の上、ここでは給食、給水、電力などで他の参加国の支援を受けた。
 輸送調整中隊は同規模で第3次隊まで、司令部要員は同規模で第2次隊まで派遣され、この活動は95(同7)年1月まで続けられた。

 
業務開始にあたり待機中の派遣隊員と車両(93(同5)年5月〜 モザンビーク)

 
追悼セレモニーで国旗をもって整列する各国軍人など(93(同5)年5月〜 モザンビーク)

(2)ルワンダ難民救援のための活動
 94(同6)年9月、ルワンダ内戦で大量に発生した難民を救援するため、陸上・海上・航空自衛官で編成されたルワンダ難民救援隊(陸自主体の編成)260名をアフリカのザイール(当時)に派遣した。これは、わが国初の人道的な国際救援活動であり、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)などとの調整を行いつつ、医療、防疫、給水などの活動を行った。
 医療については、コレラやマラリアなど、日本では医療経験が乏しい疾病に直面する困難な状況の中で、緊急時の夜間診療を含め、1日平均30名以上、延べ約2,100名の外来患者の診療や約70件の手術を行った。防疫については、難民キャンプのトイレなどの防疫、防疫用薬剤の輸送、マラリア予防やしらみ駆除の普及教育などを行った。給水については、難民用の給水活動を実施、給水量は1日平均約1,200トン、計約7万トンに達した。
 また、現地の治安状況が憂慮されたことから、隊員の安全確保に万全を期すため、警備についてザイール軍の支援を受けたほか、部隊は必要に応じ武器を携行し、防弾チョッキや鉄帽を着用して行動した。さらに、銃声の聞こえない夜はほとんどないという状況の下、宿営地内では、土のう積みなどの所要の警備措置を講じた。
 空自で編成された空輸派遣隊118名は、ケニアのナイロビを拠点に空輸業務を行った。具体的には、ナイロビとゴマの間で、救援隊の隊員や同隊が必要とする補給物資の空輸とともに、UNHCRやNGOなどの要員や物資の空輸も併せて行った。
 ゴマ空港は滑走路の状態が悪く、航空管制も必ずしも十分とはいえなかったが、終始安全に業務を行った。空輸派遣隊は、C-130H輸送機により、片道約1,000kmの距離をほぼ毎日、合計で98便運航し、輸送人員は延べ約3,400名、輸送貨物は計約510トンに達し、この活動は同年12月まで続けられた。

 
野外手術システム内において医療業務を行っているルワンダ難民救援隊(94(同6)年9月〜 ザイール(当時))

(3)ゴラン高原での活動
 96(同8)年、ゴラン高原の国連兵力引き離し監視隊(UNDOF:United Nations Disengagement Observer Force)に対し、自衛隊の輸送隊などを派遣し、現在も活動中である1

(4)国際平和協力法の改正
 自衛隊は、これまで国際平和協力業務において様々な成果を収めたが、一方で、個々の隊員の判断によるものとされていた武器の使用について、隊員の心理的負担が大きかったなどの反省があった。
 このため、98(同10)年の国際平和協力法の改正においては、武器の使用の一層の適正を確保するため、現場に上官が在るときは、生命や身体に対する侵害または危難が切迫し、当該上官の命令を受けるいとまがない場合を除き、武器の使用は当該上官の命令によるものとする武器使用規定の改正がなされた。

(5)東ティモールでの活動
 わが国は、UNHCRから西ティモールに所在する東ティモール避難民に対する援助物資の輸送の要請を受け、99(同11)年11月、人道的な国際救援活動として、スラバヤ(ジャワ島)とクパン(西ティモール)との間の物資輸送を主任務とする、空自で編成された東ティモール避難民救援空輸隊113名を派遣した。
 空輸隊は、延べ47便、計約400トンの援助物資の空輸を行い、この活動は00(同12)年2月まで続けられた。
 また、昨年2月から国連東ティモール暫定行政機構(UNTAET:United Nations Transitional Administration in East Timor)とその後継となる国連東ティモール支援団(UNMISET:United Nations Mission of Support in East Timor)に対して、施設群などを派遣し、現在も活動中である2

 
空輸物資(スリーピング・マット、キッチンセットなど)を卸下中の空輸隊(99(同11)年11月 東ティモール ディリ空港)
 

(6)アフガニスタン難民救援のための活動
 わが国は、UNHCRから、パキスタンにおけるアフガニスタン難民に対する人道的な国際救援活動のための物資の提供とこの物資の輸送の要請を受け、01(同13)年10月、人道的な国際救援活動として、パキスタンまでの物資輸送を任務とする、陸上・航空自衛官で編成されたアフガニスタン難民救援空輸隊(空自主体の編成)138名を派遣した。
 同隊は、イスラマバードのチャクララ基地に到着して、UNHCR現地事務所へテント、毛布などの救援物資を引き渡した。

 
空輸物資(天幕、毛布など)を卸下中の空輸隊(01(同13)年10月 パキスタン チャクララ空軍基地) 



 
1)現在の活動については本章4節参照。

 
2)現在の活動については本章4節参照。


 

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