第3章 緊急事態への対応 

武力攻撃事態対処関連3法成立の意義

 本年6月6日、小泉総理は、武力攻撃事態対処関連3法の成立に際しての談話で、「国と国民の安全の確保は、国家存立の基盤をなすものであり、そのための法制の整備は、わが国の安全保障上の長年の懸案でありました。昨年4月、政府案を国会に提出して以来、衆参両議院において活発な議論が行われ、これらの法律が、与野党の幅広い合意の下に成立したことは大きな意義を有するものであります。」と述べた。
 いわゆる「有事法制」については、ややもすれば、これまでそのような法制を研究すること自体が戦争を招くのだとする議論が見られ、必ずしも個別具体的な論点について十分な議論が行われてこなかった。しかし、近年、わが国では安全保障についての議論が活発に行われるようになっており、今国会においては、与野党により、自衛隊による武力の行使や集団的自衛権にかかる事項、武力攻撃事態への対処と地方公共団体との関係など、広範な論点にわたっての議論が行われ、その結果、与野党の共同による修正が行われた。
 こうして、幅広い支持を得て武力攻撃事態対処関連3法が成立したが、その審議における活発な議論を通じ国民の理解はより深まったと考えられる。
 これら3法の成立は、活発な議論を通じての国民の理解の深まりを受け、与野党の幅広い合意が形成されたという点で、わが国の防衛政策にとって歴史的転換点であるといえよう。また、これら3法の内容としては、武力攻撃事態における自衛隊の行動の円滑化のみならず、政府全体としての取組の仕組みを定め、さらに、国民の保護のための法制などをはじめとして、今後整備すべきもののプログラムを示しているという点で、前述の談話で小泉総理が述べたように「政府の最も重要な責務である緊急事態への対処に関する制度の基礎が確立した(中略)(本年6月6日 小泉総理談話)」ことになる。
 したがって、今後は、国民の保護のための法制をはじめとする個別の法制の整備、更には運用面での態勢の整備などを行うこととなることから、防衛庁としては、引き続き関係省庁と緊密に協力しながら精力的に整備を進めていく必要があると考えている。

 

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