法整備などにかかるこれまでの取組
(1)第154回通常国会(昨年)での審議
昨年2月、小泉総理は、通常国会の施政方針演説で、「国民の安全を確保し、有事に強い国づくりを進めるため、与党とも緊密に連携しつつ、有事への対応に関する法律について、取りまとめを急ぎ、関連法案を今国会に提出します。」と述べた。
また、同年4月、「国家の緊急事態への対処態勢に関する内閣総理大臣談話」で、わが国の緊急事態対処の全般を見直して、いかなる事態にも対応できる安全な国づくりを進めるため、当面する課題への対応として、1)安全保障会議の機能の更なる強化、2)武装不審船に対する効果的かつ安全な対処態勢の整備、3)テロ対策の推進の継続、自衛隊と警察機関のより緊密な連携のための運用面の改善、4)武力攻撃事態に対処するための法制の整備、に全力で取り組むことを表明した。
こうして、同年4月、政府は、「武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案」、「安全保障会議設置法の一部を改正する法律案」、「自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案」(武力攻撃事態対処関連3法案)を閣議決定
1し、国会に提出した。
衆議院の武力攻撃事態対処特別委員会では、1)「武力攻撃事態」は、「武力攻撃(武力攻撃のおそれのある場合を含む。)が発生した事態又は事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態」と定義されており、「武力攻撃事態」を「予測」を含めて包括的に定義しているのでわかりにくい、2)武力攻撃事態以外の緊急事態への対応、例えば武装不審船事案や大規模テロなどの新たな脅威に対する政府の対応が具体的に示されていない、3)国民の保護のための法制について、全体像が示されていない、などの意見があり、約67時間にわたる審議の末、継続審査の扱いとなった。
(2)第154回通常国会終了後の政府の取組
政府は、国家の緊急事態への対処について、昨年の通常国会での議論も十分に踏まえ、国会終了後、速やかに国民の保護のための法制などの個別の事態対処法制の内容を深める作業を行うとともに、テロ・不審船などの武力攻撃事態以外の緊急事態への対処についても総点検を行い、必要な検討を進めることとした。
本件は、政府を挙げて一体となって取り組むべき重要課題であることから、防衛庁では、防衛庁長官を委員長とする、「防衛庁国家緊急事態対処検討委員会」を設置し、検討を推進することとした。
(3)第155回臨時国会(昨年)での審議
昨年10月、小泉総理は、臨時国会の所信表明演説で、「今国会においては、有事法制(中略)など継続審査となっている法案に優先的に取組み、成立を期します。(中略)有事への「備え」に関する法制については、先の通常国会での議論を踏まえ、基本的な枠組みに加え、国民保護のための法制など個別の法制について検討してまいりました。法案審議を通じて、国民の理解と協力を得られるよう取り組みます。」と述べた。
昨年の通常国会における審議を踏まえ、継続審査の扱いとなっている法案(政府原案)に対する与党修正案が提出された。その概要は次のとおりである。
1) 「武力攻撃事態」の定義について、いわゆる「予測」事態まで含んでいたそれまでの定義から、「予測」事態を切り離して事態を二分し(「武力攻撃事態」と「武力攻撃予測事態」)、それぞれの事態について、対処の基本理念などを明らかにするとともに、それぞれの定義をわかりやすいものとする。
2) 武力攻撃事態以外の緊急事態対処のための措置として、武装不審船事案や大規模テロなどの新たな脅威への対処に取り組む旨や、これらの事態に対処するために必要な施策の内容などを明示する。
3) 国民の保護のための法制について、その整備を迅速かつ集中的に推進するとともに、その整備に当たっては地方公共団体、民間機関などの意見を聴き、広く国民の理解を得ることが必要であることから、内閣に、国民保護法制整備本部を設置する(当時、検討されていた国民の保護のための法制のイメージは図表参照。)。
本臨時国会においては、与党修正案は廃案となったが、政府原案は継続審査の扱いとなり、次期国会にもちこされることとなった(この段階で審議時間は約71時間)。