第3章 緊急事態への対応 


隊員の現場の姿 戦場(船上)で孤軍奮闘する調理員

第41掃海隊 ゆりしま  2等海曹 佐藤 勝

 私は平成14年6月から掃海艇の調理員として勤務しており、乗員約45名分の調理作業に携わっています。
 掃海艇の特徴としては、護衛艦と比較すると、天候状況に左右されやすいことと乗員の人数がかなり少ないことです。天候が悪化するとかなり激しい動揺があります。その激しい動揺の中で行う調理作業は大変厳しく辛いものがあります。例えば、フライヤーやオーブンなどは動揺で油などがこぼれ、火災を起こす原因や自分自身がやけどを負うことになりかねないからです。そのため、その日の海面状況にあった献立を考え、冷蔵庫や冷凍庫と相談しながら日々作業を進めています。使える数少ない器材を駆使し、栄養やバランスを考慮し、また、味付けや彩に気を配りながら調理を実施しています。しかし、動揺が増すに従い感覚が鈍くなるとともに食欲もなくなり、味覚も変わってくることが難点です。そんな時は調理員長と2人で味付けを確認しつつ配食するように心がけています。そのようなことで、味覚を鈍らせないように自己の健康管理にも常に気をつけています。
 掃海艇勤務はよく家族的な生活という話を耳にしますが、乗り組んでみてまさにそのとおりでした。それは、配置に関係なく掃海科、機関科などの若い人達がよく協力してくれるし、状況によっては上級海曹までも積極的に手伝ってくれます。それから、調理作業以外においてもいろいろと補佐してくれます。今までは大型艦に勤務していた経験しかなく、常に調理員が1名以上は当直していましたので、その人が休日も食事を作っていたので、気にすることなく勤務していましたが、掃海艇は休日など調理員がいない日もあります。このような時の食事を他のパートの人に調理してもらうこともあり、まったく頭の下がる思いです。
 掃海艇の調理員は毎日食事の用意をしていればよいものではありません。ここではある掃海艇の調理員の1日を紹介します。早朝、朝食の準備、士官室の食事用意、午後は、昼食用の出庫、形成調理(焼き物、揚げ物、味付けなど)、出港前は前部電話員、掃海訓練では上甲板電話員、昼食時の士官室係、午後は夕食の出庫、形成調理と夕食の士官室係、入港時はまた前部電話員、入港後は舷門立直となかなか忙しいものがあります。場合によっては一昼夜続く訓練もあり、そのときは夜食やさらに深夜食の調理作業も実施します。このように掃海艇は人員の関係上1人何役もこなさなければなりません。しかし、その分、今までの大型艦と違ってやりがいもわいてきて調理員としての充実感をかみしめています。
 最後に今後の抱負として、これまでの遠洋航海や外洋航路などの大海原で培った経験を糧とし、掃海艇勤務で乗員に喜んでもらえる食事を工夫し、日々精進するとともに技術向上に努めていく所存です。

 
掃海艇「ゆりしま」内で食事準備中の筆者(本年3月)


 

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