第3章 緊急事態への対応 


隊員の現場の姿 佐渡島除雪奮戦記

中部航空施設隊 第1作業隊 2等空曹  松岡 彰芳

 私は、航空自衛隊 中部航空施設隊 第1作業隊(埼玉県入間基地)に所属する2等空曹 松岡彰芳(愛媛県松山市出身、年齢34歳)といいます。中部航空施設隊は、航空自衛隊の中核となる航空総隊中部航空方面隊の直轄部隊であり、第1作業隊は、滑走路被害復旧訓練、各種土木支援作業及び冬期の除雪支援作業などを実施しています。私は、第1作業隊の中で作業小隊の分隊長という立場にあり、作業現場での分隊員の作業指揮、教育及び安全管理などを任されています。今回は、我が第1作業隊の任務の1つである佐渡分屯基地(新潟県)における除雪支援作業について紹介します。
 毎年師走の声を聞く12月になると、第1作業隊の約20名は百里に所在する第3作業隊の約10名とともに、渡り鳥のように海を渡り、佐渡分屯基地へと移動します。(通常残雪作業まで実施し、翌年の4月下旬頃まで約6か月間の勤務となる。)
 佐渡分屯基地は、日本海に浮かぶ佐渡ヶ島の金北山に位置し、レーダーで領空侵犯機の警戒監視にあたるレーダーサイト(第46警戒隊)が所在し、分屯基地内は、山頂のオペレーション地区(標高1,172m)、妙見山地区(標高1,042m)、OH地区(標高1,020m)、キャットハウス地区(標高950m)及びベースキャンプ地区(標高450m)の5つの地区に分かれています。第1作業隊は、佐渡分屯基地で除雪隊を編成し、山の麓からベースキャンプ地区までの道路(約1.8km)は車両が走行できる状態に(完全除雪という)、ベースキャンプ地区から山頂のオペレーション地区までの道路(約8.7km)は雪を圧雪して「雪の道」を造り雪上車が走行できる状態(圧雪除雪という)にして、オペレーション地区の勤務者が交代するための道路通行の確保を任務としています。
 圧雪除雪作業は、キャットハウス地区にある施設に8人で寝泊まりし、器材はブルドーザを使用します。特に吹雪の日は過酷で、ブルドーザの運転席はキャビンがないので気温はマイナス20度近くまで低下し、山の谷間ではブルドーザにしがみつくほどの風が吹き、視界はゼロに等しく、5m以上吹きだまった雪を崩して道路を作りながら山頂のオペレーションを目指します。
 私がこの15年間無事に除雪作業をやってこられたのは、まさに先輩の教えのお陰です。昭和44年に私たちの先輩が除雪作業中に雪崩に遭遇して、ブルドーザーごと道路から下に流され殉職しています。今後、このような事故が起きないように先輩となった私が、後輩隊員に今までの経験、除雪技術及び雪山の厳しさを教え、1日も早く一人前の除雪作業員として育てることにより、後輩隊員は次の後輩隊員へと教えを継承され事故が防げるものと確信しています。
 私達の仕事は「施設」という後方業務であり、決して華やかでもなく、また、目立つ仕事でもありません。ただ自己の仕事を見つめ直す時、国防という崇高な任務を遂行し、縁の下の力持ちとして頑張っていると自負する時、自衛官になって本当によかったと感じています。今後も、今までの経験を仕事にいかし、更に精進したいと思います。

 
基地内で除雪作業中の筆者(本年1月 新潟県空自佐渡分屯基地)


 

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