第2章 わが国の防衛政策 


解説 自衛隊と米軍との協議

 日米間での安全保障問題に関する協議は、大臣クラスによって行われる日米安全保障協議委員会(SCC)、次官・局長クラスなどによって行われる日米安全保障事務レベル協議(SSC)などをはじめとして、各種のレベルで緊密に行われている。そのような協議の中に、各自衛隊と米軍の軍種間での協議がある。これらは、陸・海・空自衛隊毎に米陸・海・空軍、海兵隊との間で行われており、具体的には各自衛隊の幕僚長と米国の陸・空軍参謀総長、海軍作戦部長及び海兵隊総司令官の協議から、各幕僚監部の幕僚と米国の陸・空軍参謀本部、海軍作戦本部及び海兵隊総司令部の幕僚、太平洋軍や在日米軍との協議まで様々である。また、自衛隊の統合幕僚会議事務局と米国の統合参謀本部との間の協議も定期的に行われている。
 各自衛隊はこのような協議の場も生かして、米軍との連携強化を図っており、協議の内容は日米共同訓練・演習に関する事項のほか、多岐にわたっている。
 それらの一例として、陸上自衛隊(陸自)は、2001(平成13)年から、米陸軍、米海兵隊との間で将官クラスが集まり、それぞれの任務、役割、能力や直面する課題などについて相互の認識を深めるとともに参加者間の人間関係を強化することを目的とした、シニア・レベル・セミナー(SLS:Senior Level Seminar)を実施している。陸自と米陸軍、米海兵隊の三者間による10名以上もの将官クラスが参加する本セミナーは日米間の初めての試みといえるものであり、昨年12月で3回目を数え軌道にのってきたといえる。
 昨年12月、東京で行われたSLSでは、陸自、米陸軍と米海兵隊の3者が直面している軍改革などを主要なテーマとして協議が行われた。

 意見交換において、陸自、米陸軍、米海兵隊ともに将来体制に向けた改革については、様々な困難に直面しつつも、その推進にはきわめて高い優先度を保持していることが確認されるとともに、特に多様化する脅威への対処の必要性、国内事情などを踏まえた改革の困難性(特に改革における統合上の問題)、教育訓練の方向性、部隊の即応性確保の必要性など、三者共通の課題が存在することが確認できた。また、このような将来体制のあるべき姿への改革の方向性と課題については、今後さらに緊密な意見交換を行うことについて合意した。
 このような協議の地道な積み重ねは、強固な日米関係構築の礎になり、日米防衛協力を実効性あるものにする一助となるものと考えている。

 
陸幕防衛部が進行役となり議論中の第3回SLS(昨年12月 市ヶ谷防衛庁)


 

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