第3章 緊急事態への対応 

周辺海域の防衛のための作戦

 島国であるわが国に対する武力攻撃が行われる場合には、航空攻撃に併せ、艦船などによる攻撃が考えられる。
 周辺海域の防衛のための作戦は、海自が主体となって、陸・空自とともに、対水上戦、対潜戦1、防空戦(個別的な防空)などの各種の作戦を組み合わせて行う。各種の作戦のは、洋上における哨戒(しょうかい)2、敵の水上艦艇の撃破、港湾や海峡の防備3などからなるが、これら各種の作戦の成果を積み重ねて、敵の進出を阻止し、その戦力を消耗させることにより敵の作戦を阻止し周辺海域を防衛する。

(1)洋上における対処
 海自の哨戒機(P-3C)による広い海域の哨戒や、護衛艦などによる船舶の航行海域などの哨戒を行う。わが国の船舶などを攻撃しようとする敵の水上艦艇や潜水艦を発見した場合は、護衛艦、潜水艦、哨戒機などによりこれを撃破する(対水上戦、対潜戦)。状況により空自の支援戦闘機の支援を受ける。

(2)沿岸海域における対処
 護衛艦、哨戒機(SH-60J)、掃海(そうかい)艦艇4などにより主要な港湾周辺の哨戒を行い、敵の攻撃を早期に発見するとともに、船舶や沿岸海域の安全を確保する。
 敵の水上艦艇、潜水艦などによる攻撃が行われた場合には、護衛艦、哨戒機などによりこれを撃破する(対水上戦、対潜戦)。状況により支援戦闘機や陸自の地対艦誘導弾の支援を受ける。また、敵が機雷5を敷設した場合には、掃海艦艇などによりこれを除去する(対機雷戦)。

 
浮遊、浮流機雷対処訓練中の海自護衛艦「はるな」、哨戒機(SH-60J)、水中処分隊員

(3)主要な海峡における対処
 状況により、掃海母艦、潜水艦、海・空自の航空機などで、主要な海域に機雷を敷設する(機雷敷設戦)。敵の水上艦艇や潜水艦が通過しようとする場合には、護衛艦、潜水艦、哨戒機などで撃破する(対水上戦及び対潜戦)。

(4)周辺海域の防空
 周辺海域における艦艇などの防空は護衛艦が行い、状況により空自の要撃戦闘機などの支援を受ける。

 なお、周辺海域の防衛のための作戦の実施に際し、米軍は、日米防衛協力のための指針の下、自衛隊が行う作戦を支援するとともに、機動打撃力の使用を伴うような作戦を含め、自衛隊の能力を補完するための作戦を行う。

 
周辺海域の防衛のための作戦の一例



 
1)対水上戦は、敵の水上艦艇に対して行う作戦。対潜戦は、敵の潜水艦に対して行う作戦。

 
2)哨戒とは、敵の奇襲を防いだり、情報を収集するなどの目的をもって、ある特定の地域を計画的に見まわること。

 
3)港湾や海峡という重要な地域を守るだけでなく、その周辺で行われる海上活動(海上交通や漁業)を合わせて守ること。

 
4)海中の機雷などを取り除き航海の安全を維持する作業を行う。

 
5)水面下に敷設し、艦船が触れたり、近づいたりした時に爆発し、破壊・沈船させるもの。


 

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