第3章 緊急事態への対応 

防空のための作戦

 わが国に対する武力攻撃が行われる場合には、周囲を海に囲まれたわが国の地理的な特性や現代戦の様相から、まず航空機やミサイルによる急襲的な航空攻撃が行われ、この航空攻撃は反復されるのが一般的である。
 防空のための作戦は、このような侵攻する敵航空機などを撃破する作戦であり、侵攻側が攻撃の時期、地域、方法を選択し得ること、初動対応の適否が作戦全般に及ぼす影響が大きいこと、組織的な戦闘力の発揮が重要であること、などの特性を有する。したがって、平素から即応態勢を保持し、継続的な情報の入手に努めるとともに、作戦では戦闘力を迅速かつ総合的に発揮することなどが必要である。
 防空のための作戦は、空自が主体となって行なう全般的な防空と、各自衛隊が基地や部隊などを守るために行う個別的な防空に区分できる。ここでは、この作戦の中核となる全般的な防空について説明する。
 全般的な防空においては、敵の航空攻撃に即応して国土からできる限り遠方の空域で迎え撃ち、敵に航空優勢1を獲得させず、国民と国土の被害を防ぐとともに、敵に大きな損害を与え、敵の航空攻撃の継続を困難にするよう努める。

 
ペトリオット実弾射撃訓練を行っている空自高射隊(昨年9月 米国ホワイトサンズ射場)

(1)侵入する航空機の発見
 空自は航空警戒管制部隊のレーダーや早期警戒管制機などにより、わが国周辺のほぼ全空域を常時監視し、侵入する航空機などをできるだけ早く発見する。

(2)発見した航空機の識別
 自動警戒管制組織(BADGE(:Base Air Defense Ground Environment)システム)2などにより、発見した航空機が敵か味方かを識別する。

(3)敵の航空機に対する要撃3・撃破など
 敵の航空機と判断される場合、要撃戦闘機や陸自又は空自の地対空誘導弾によって対処するため、それぞれ撃破すべき目標を割り当てる。
 地上又は空中4で待機する要撃戦闘機を航空警戒管制組織により管制・誘導するとともに、それぞれの地対空誘導弾の特性をいかして侵入する敵の航空機を撃破する。

 なお、防空のための作戦の実施に際し、米軍は、日米防衛協力のための指針の下、自衛隊が行う作戦を支援するとともに、打撃力の使用を伴うような作戦を含め、自衛隊の能力を補完するための作戦を行う。

 
防空のための作戦の一例



 
1)空において相手航空戦力より優勢であり、相手から大きな損害を受けることなく諸作戦を遂行できる状態。

 
2)自動化した航空警戒管制組織であり、指揮命令、航跡情報などを伝達・処理する全国規模の指揮通信システム。

 
3)来襲する空中目標を撃破するため、要撃戦闘機を発進させまたは地対空誘導弾を発射させること。

 
4)このとき、要撃戦闘機は空中警戒待機(CAP:Combat Air Patrol)の態勢をとるが、戦闘機が効率的に空中警戒のための待機を行うには、戦闘機の滞空時間の延伸を可能とする、空中給油機能が必要。


 

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