第2章 わが国の防衛政策 


Q&A 武力行使との一体化

Q:武力行使との一体化とは何ですか?
A:武力行使との一体化論とは、自らは直接武力の行使をしないとしても、他の者が行う武力の行使への関与の密接性などから、わが国も武力の行使をしたとの法的評価を受けることがあり得るという考え方です。政府は、わが国が直接攻撃を受けていないにもかかわらず、そのような他国の武力の行使と一体化する活動を行うことは、憲法上許されないと解しています。
 この武力行使の一体化論について、1999(平成11)年1月22日に小渕総理(当時)は参議院本会議において、「一体化するかどうかは、活動の具体的内容の事情を総合的に勘案いたしまして、事態に即して個々具体的に判断すべきものであると考えております。」と答弁しています。また、内閣法制局長官も、97(同9)年2月13日に衆議院予算委員会において、「他国による武力の行使と一体をなす行為であるかどうか、その判断につきましては大体四つぐらいの考慮事項を述べてきているわけでございまして、(中略)、要するに、戦闘活動が行われている、または行われようとしている地点と当該行動がなされる場所との地理的関係、当該行動等の具体的内容、他国の武力の行使の任に当たる者との関係の密接性、協力しようとする相手の活動の現況等の諸般の事情を総合的に勘案して、個々的に判断さるべきものである、そういう見解をとっております。」と答弁しています。
 例えば、わが国がテロ対策特措法で米国などに対して行う補給などの支援活動について、米軍などの武力の行使と一体化しており、憲法に違反するのではないかとの批判があります。わが国がテロ対策特措法に基づいて米軍などに対して行っている支援活動は、それ自体は武力の行使に該当しない補給や輸送などの協力を、戦闘行為が行われている地域と一線を画する場所で行うものです。支援活動の持つこのような性格・内容を考慮すれば、わが国が行う支援活動は、米軍などの武力行使と一体化することはありません。



 
※)テロ対策特措法では、「国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為をいう。」とされています。


 

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