第1章 国際軍事情勢 

多国間の対話

 この地域における多国間の政治・安全保障対話の努力としては、ASEAN地域フォーラム(ARF)が挙げられる。ARFは、1993(平成5)年のASEAN外相会議及び同拡大外相会議において17か国と欧州共同体(EC:European Communities)(当時)によりアジア太平洋地域の政治・安全保障対話を行う場として創設が合意されてから、94(同6)年の第1回閣僚会合以来、徐々に参加国を拡大しつつ、これまで、毎年、閣僚会合が開催されている(現在の参加は23か国・地域)。また、00(同12)年より北朝鮮が閣僚会合に参加している。
 ARFは、現状では、欧州においてみられるような安全保障機構ではないが、アジア太平洋地域において、全域的な政治・安全保障に関する唯一の対話協力の場であるとともに、国防当局からの参加も得て各種政府間会合が開催されているという意味で意義がある。メンバー国を当事者とする問題を含めて率直な意見交換が行われるようになってきており、本年6月の会合では、北朝鮮の核問題やミャンマー情勢などについて活発な意見交換が行われた。また、ARFプロセスを予防外交へ進めることの重要性が強調され、中国より高位の軍関係者及び政府関係者による「ARF安全保障政策会議」の開催提案がなされるなど、ARFの活動の強化への動きが見られ、今後、ARFが域内の安全保障上の諸問題の解決にどのような影響を与えていくかが注目される1
 また、この地域における新たな多国間安全保障の枠組の必要性も今後の課題となっている。本年5月には、シンガポールで民間研究所主催による「アジア安全保障会議」が昨年に続き開催され、アジア太平洋地域を中心に、わが国を含む18か国から国防相などが参加し、安全保障問題に関する意見交換が行われた2

 
ARF高級事務レベル会合(本年4月 カンボジア)



 
1)4章5節1参照。

 
2)4章5節1参照。


 

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