第1章 国際軍事情勢 

欧州主要国

 欧州では、冷戦終結後、旧東西両陣営の間で大規模な紛争が生起する危険は遠のいた。これに伴い、旧東西両陣営に属した国々の間では欧州通常戦力(CFE:Conventional Armed Forces in Europe)条約のようなロシアを含む新たな多国間の軍備管理・軍縮の枠組が構築された。一方、ワルシャワ条約機構(WPO:Warsaw Pact Organization)の解体により、いわば安全保障上の空白地帯となっている中東欧地域における地域紛争の発生など、欧州は新たな安全保障上の問題に直面している。こうした事態に直面した欧州諸国は、既存の安全保障の枠組を強化・拡大して地域の安定を図るとともに、冷戦期の大規模な侵略への対応を主眼とした軍事力の再編・合理化を各々進め、紛争予防・危機管理などの軍事力の新しい役割も踏まえた、多様な事態への対応能力を確保するための努力を行っている。

(1)安全保障の枠組の強化・拡大
ア 紛争予防・危機管理・平和維持機能の強化
(ア)NATOの動向
 冷戦後、NATOは、旧ユーゴ地域における紛争に対し、和平履行部隊(IFOR:Implementation Force)(95(同7)〜96(同8)年)や安定化部隊(SFOR:Stabilization Force)を派遣するなど、紛争予防や平和維持に大きな役割を果たしてきた1。こうした変化を踏まえ、99(同11)年には、いわゆる新戦略概念(同盟の戦略概念)を採択し、加盟国への武力攻撃に対する集団防衛に加えて紛争予防や危機管理、平和維持などの任務を追加した2。また、新たな任務の増加や加盟国の戦力削減などに対応していくため、NATOは指揮系統の簡素化・柔軟化、NATO即応部隊(NRF:NATO Response Force)創設合意による即応能力の強化などを行いつつある3
 また、実任務を通じて明らかになった米欧間の軍事能力格差を踏まえ、昨年11月には対CBR(化学・生物・放射線兵器)能力の向上などを求めた「プラハ能力コミットメント」(PCC:Prague Capabilities Commitment)を合意するなど、軍事能力格差の縮小への努力の動きが見られる。
 01(同13)年9月に発生した米国における同時多発テロに際して、NATOは迅速に対応した。集団的自衛権について定めた北大西洋条約第5条の適用対象となることを史上初めて決定して、米国の要請に基づき具体的な支援策4を発表し、常設艦隊を東地中海に派遣するなど、米軍の行動を支援している。
 一方、イラクへの対応をめぐっては、武力攻撃を主張する米国に同調する英国、スペインなどと、武力行使は国連決議に則って行うべきだとするフランス、ドイツなどの2つに分かれてNATO加盟国の中でも意見の相違が生じた。この相違は、本年1月に、米国が、イラク攻撃後に予想されるイラクによるトルコ攻撃から同国を防衛するための支援をNATOに要請した5ことで、より深まった。米国からの要請については、同年2月、支援をトルコ防衛に限定し、かつこれをイラク攻撃準備としないことを条件にNATO内6で合意がなされたが、イラクへの対応そのものについてはその後も意見の相違は解消されないまま推移した。イラク復興支援への関与をめぐっては、安保理決議第1483号はドイツ・フランスを含むほぼ全会一致で採択されているが、その後も顕著な改善には至っていない。
(イ)WEU・EUなどの動向
 欧州では冷戦後の新たな安全保障課題にかんがみて西欧同盟(WEU:Western European Union)7の再活性化が図られ、92(同4)年のペータースベルク宣言により、WEUには人道援助・救援、平和維持と危機管理の任務が追加された(ペータースベルク任務)。しかし、WEUは00(同12)年11月のマルセイユ理事会において参謀部などを欧州連合(EU:European Union)に移管することを決定し、ペータースベルク任務を中心とする欧州独自の防衛の焦点はEUに移りつつある8
(ウ)NATOとEUの関係
 欧州諸国では、紛争予防・危機管理・平和維持の分野において主体的に対応できるよう、独自の安全保障の枠組を構築する試みがなされている。欧州諸国のこうした動きに対して、当初はNATOの意義の低下に懸念を抱いた米国が態度を軟化させ、むしろこうした動きを歓迎するようになったことを受けて、NATOは、94(同6)年、WEUを軸とする欧州安全保障・防衛アイデンティティ(ESDI:European Security and Defense Identity)構想9、ESDIを推進するためにNATOの資産と能力をWEU主導の作戦に提供することや平和維持活動などの任務を効果的に行うための共同統合任務部隊(CJTF:Combined Joint Task Forces)構想を推進することを確認した。96(同8)年の外相理事会と国防相理事会ではCJTFを了承し、WEUとの細部手続を経て、00(同12)年2月にはNATOとWEUの合同指揮所演習が初めて行われた。
 EUにおいても、対米同盟関係を重視し欧州独自の防衛力の保持に懐疑的な姿勢を示していた英国が欧州独自の防衛力に積極的な姿勢に政策を転換した10ことにより加盟国の足並みが揃ったことから、99(同11)年、ヘルシンキ欧州理事会において、NATOが関与しない場合にEU主導の軍事作戦を行うためにEUが独自の軍事能力を保有することを決定した11。01(同13)年12月に開催されたラーケン欧州理事会においては、EUがいくつかの危機管理作戦を遂行する能力を有するに至ったことが表明された。
 このようにEU内部での軍事能力の保有への動きが進展し、欧州の主体性強化の焦点がWEUからEUへ移行したことを踏まえ、NATOはEUとの間で協力と調整に必要な枠組の整備を図りつつある12。その一環として、EUは、これまでNATOが行ってきたマケドニアにおける和平合意の履行を監督する要員警護のための作戦(アライド・ハーモニー作戦)を引き継いで、本年3月より、EUとしては初の軍人を派遣した平和維持活動(コンコルディア作戦)を開始した13
 このように米国を含むNATOの能力に大きく依存しながらEUの自律的な安全保障政策が模索されてきたが、イラクに対する軍事作戦の前後には米国とドイツ・フランスなどの欧州諸国との認識の違いが浮き彫りになった。そうした中、本年4月にはフランス・ドイツなど欧州4か国がEUの防衛力強化のためNATOの能力に依存することなく作戦立案・指揮が可能な中核的機関の創設を提唱し、EUの独自性を強める動きをみせたことから、米国や英国などの反発を招いた。さらには軍改革の進捗(しんちょく)状況や防衛費を取り巻く財政事情も多様であり、欧州各国が今後足並みを揃えて必要な能力を確保・維持できるのかが課題となっている14。また、米国やトルコなどEUに加盟していないNATO加盟国とEUに加盟している欧州のNATO加盟国との関係をいかに調整しNATOとEUの政策の整合性を確保するのか、さらに、ロシアなど欧州情勢に影響を及ぼし得る域外の国家との関係をいかに調整していくかなどの課題が残されている15

 
欧州の安全保障機構(2003.5.31現在)

イ 安全保障の枠組の地理的拡大による安定の確保
 いわば安全保障上の空白地帯となった中東欧地域に対しては、既存の安全保障の枠組を拡大して安定を確保することが試みられている。NATOは94(同8)年に「平和のためのパートナーシップ」(PfP:Partnership for Peace)を採択し16、これに基づき平和維持活動や難民問題対処などに関する演習が行われている。
 NATO加盟国の拡大については、95(同7)年の大使級理事会において「NATO拡大に関する研究」が承認され、NATO拡大の目標と新規加盟国が受け入れるべき原則が提示された17。ロシアはNATO拡大に一貫して反対の姿勢を貫いてきたが、97(同9)年にNATOとロシアの協力関係を規定する「基本文書」が署名されたことは、一定の拡大を事実上容認する形となり、99(同11)年には加盟国の拡大が行われ(第1次拡大)、昨年11月にはさらに7か国の加盟招請が決定された(第2次拡大)18。なお、NATOとロシアの関係は、01(同13)年9月の米国における同時多発テロ以降、安全保障に関する共通の課題に対処するために新たな関係を構築する動きをみせ、昨年5月にローマで開催されたNATO・ロシア首脳会議でNATO・ロシア理事会を設置することが決定された19
 また、EUも98(同10)年春から中東欧諸国などの新規加盟交渉を開始しており、昨年12月、バルト三国など10か国の来年5月の加盟が決定された20。なお、EUでは、将来の加盟国の拡大に備えたアムステルダム条約(EU基本条約)が99(同11)年に発効し、これを改正したニース条約が01(同13)年2月に調印され、本年2月に発効した。これらの条約を通じ意思決定の迅速化・効率化などが図られている。

 
NATO加盟国の拡大状況

(2)多様な事態への対応能力を確保するための各国の努力
 各国は、多様な事態への対応を念頭に、軍隊の任務について総じて治安維持などの自国の防衛以外の任務を重視する傾向にあり、防衛力の整備においても、NATOなどにおける役割を考慮しつつ、部隊展開のための輸送能力強化などに努めてきている。
ア 英国
 英国は、現在、98(同10)年の「戦略防衛見直し」(SDR:Strategic Defense Review)を防衛政策の基礎としている。
 軍隊の任務は、1)平時の治安維持(テロ対処支援)、2)海外領土の保全、3)軍備管理・交流などの「防衛外交」、4)より広範な国益の確保に対する支援21、5)平和支援・人道援助、6)NATO域外の地域紛争・危機対処、7)NATO地域での侵攻対処、8)NATOへの戦略的攻撃対処とされている。その上で、展開、共同対処、各強度の紛争へのバランスのとれた対処、最新技術や戦闘の趨勢を踏まえた近代化を重視しつつ、湾岸戦争のような1つの大規模の事態、又はボスニアのような2つの中規模事態に同時に対処できる戦力を備えるとしている。具体的には、核戦力の削減(核弾頭を最大300発から200発以下へ)、統合戦闘能力の強化(緊急展開部隊の創設、海・空軍固定翼部隊の統合運用、統合ヘリコプターコマンドや統合陸・空軍防空組織の編成など)、NBC防護などの改善、能力の向上(陸軍兵力の増員、空母・新型戦闘機・ミサイルなどの取得)や軍人の処遇改善を図るとしており、現在までに逐次達成されている。
 01(同13)年の米国における同時多発テロを踏まえ、英国は、国際テロへの対処という新たな課題に対する方針及び能力について再検討することとし、昨年7月、国外でのテロリスト対処や本土防衛及び治安維持能力の強化などのための新たな対策の必要性を強調し、必要な分野に資源を投入すべきとした「戦略防衛見直しへの新たな1章」を発表した。
イ ドイツ
 ドイツは、90(同2)年の統一以来、兵力の削減に努めてきたが、シュレーダー政権は、兵力がなお過剰であり、任務遂行と近代化に支障をきたしているとの観点から検討を行い、00(同12)年6月に新たな改革計画を決定した。軍隊の任務は1)領空・領海監視などの主権擁護、2)重要施設などの防護支援、3)救難・居留民退避、4)国防、5)集団防衛、6)危機管理、7)信頼醸成など、8)災害救援活動とされ、戦略輸送能力、指揮・統制・通信・情報を重視しつつ、戦車などの大型兵器を削減するが、スタンドオフ・精密交戦能力を改善し、NATOやEUにおけるドイツの役割に見合う軍事能力を備えるとしている。具体的には、1つの大規模作戦(最大5万人の兵力が関与)又は2つの中規模作戦(それぞれ最大1万人の兵力が関与)などに投入される即応部隊とこれを支える基礎軍事組織など約28万人の兵力22を保有するとし、兵役期間の短縮などを図るものの徴兵制は維持することとされた。
 この改革を行うためには、余剰人員の削減に伴う退職金などの一時的増大や処遇改善のため人件費の増大が見込まれるが、一方、近代化に必要な投資的経費も確保する必要がある。このため、移行期の防衛費のあり方については、02(同14)年から06(同18)年における防衛予算の上限額を236億ユーロにすることとされた。
 なお、本年5月、シュトルック国防相は新たに「防衛政策指針」を発表した。同ガイドラインは、ドイツの領土に対する従来型の脅威は消滅したものの、テロや大量破壊兵器の拡散など新たな脅威が広がっているという認識の下、国連やNATO、EUの枠組の中で行う紛争予防・危機管理を連邦軍の任務の重点として位置付けている。また、防衛能力もそれに適合するよう、1)指揮・統制、2)情報収集・偵察、3)機動性、4)効果的関与、5)支援・持続性、6)残存性・防御といった能力強化のために、資源を重点配分していくとしている。
ウ フランス
 フランスは、現在、シラク大統領が96(同8)年に発表した15(同27)年までのフランス軍の近代化計画を防衛政策の基礎としている。軍隊の任務は、1)死活的国益の防衛、2)欧州と地中海地域の安保・防衛への貢献、3)平和と国際法の尊重への貢献、4)公共の秩序維持23とされ、統合作戦、戦略機動、情報などを重視しつつ、95(同7)年には約50万人であった総兵力を将来的には35万人に削減し、核抑止、紛争予防、海外への戦力展開や国土防衛(テロ対処など)に対応できる戦力を備えるとしている。
 97(同9)年から02(同14)年を対象とした防衛力整備計画の終了を受けて、01(同13)年7月、03(同15)年から08(同20)年までの計画を閣議決定したが24、昨年5月のシラク大統領の再選及び保革共存政権の解消を受けて、計画の見直しを決定し、同年9月に改めて閣議決定を行い、本年1月に議会承認された。
 現計画においては、欧州共通の防衛体制の実現に配意し、軍の専門職化の強化と変化する任務に適した新世代の装備の導入を基本方針としており、旧計画と比較すると、2隻目の空母建造、戦略原子力潜水艦の調達増、ルクレール戦車の調達増、装備関係費増(約800億ユーロ→約880億ユーロへ)など新型装備の一層の拡充が盛り込まれている。

(3)欧州における安定化のための努力
ア 軍備管理・軍縮
 90(同2)年にNATOとWPOの加盟国で署名し、92(同4)年に発効したCFE条約は、東西両陣営間の通常戦力分野におけるはじめての軍備管理・軍縮に関する合意であった。この条約は、戦車、装甲戦闘車両、火砲、戦闘機と攻撃ヘリの5つの区分の兵器について、東西両グループ25の保有の上限を定め、保有上限を超える兵器の削減を、破壊又は民生転用などの方法で行うこととしていた。
 CFE条約は、95(同7)年までに約6万の各種兵器が削減されるという成果を得た。しかし、ロシアは、ソ連の崩壊により、ロシアの南北の側翼部(バルト三国に近いレニングラード軍管区とチェチェン共和国を含む北カフカス軍管区)で保有できる戦力が極めて少なくなった上、チェチェン進攻後の兵力移転などに伴い、側翼部での戦力削減が困難になったことを理由として、これらの地域での装備保有上限の修正を求め、97(同9)年よりCFE条約の見直しが開始された。同年、交渉の基礎となる合意文書が採択され、これまでのグループごとの上限とゾーン26ごとの上限に代えて、国ごとの装備保有上限と各国領域ごとの装備保有上限(国ごとの上限に領域内の外国駐留軍を加えたもの)を導入すること、条約対象地域の保有装備総数の削減を目指すことなどが合意され、99(同11)年、イスタンブールで開催されたOSCE首脳会議において、加盟30か国により調印された。なお、ロシアの南部の側翼部(チェチェン共和国を含む北カフカス軍管区)における暫定的な装備数の上限増加要求は、ロシアがチェチェン紛争を解決し次第装備数を削減することなどを約束したことをもって他の加盟国から合意を得ている。
イ 信頼醸成措置(CBM:Confidence Building Measures)27
 欧州においては、89(同元)年から信頼・安全醸成措置(CSBM:Confidence and Security-Building Measures)交渉が行われてきたが、92(同4)年の欧州安全保障協力会議(CSCE:Conference on Security and Cooperation in Europe)全体会議において、軍事情報の年次交換、一定規模以上の演習などの通報・査察・制限などを内容とする「ウィーン文書1992」が採択された28。99(同11)年、主要兵器・装備システムが使われなくなった場合の通報、交流に関する情報提供、演習実施に関する砲・装甲戦闘車などの数的制限、査察報告の期限や地域的な信頼醸成のため多国間・二国間などの自主的な同意に基づく信頼醸成措置の実施などを追加した「ウィーン文書1999」が採択された。
 また、92(同4)年に25か国により署名された、相互の査察飛行により、締約国の軍事活動の公開性と透明性を増進させるとともに、軍備管理の検証手段を補足するオープン・スカイズ条約が、昨年1月に発効した。査察対象地域は、締約国の主権下にある領土であり、締約国が自国領土以外に有する在外基地は含まない。査察飛行29は、定められた種類のセンサーを装備した非武装の航空機により、査察国が策定し被査察国が了承した飛行計画に従って行われる。査察飛行により収集されたデータは、すべての締約国が入手できる。本条約は、発効後6か月以降に、欧州以外の諸国が条約に加入する可能性を認めている。本年2月現在、締約国は28か国である。



 
1)和平履行部隊(IFOR)(1995(平成7)〜96(同8)年)や安定化部隊(SFOR)がボスニア・ヘルツェゴビナに派遣され、また、99(同11)年には、国際安全保障部隊(KFOR)がコソボに派遣されている。マケドニアでは、NATOは01(同13)年以降、武装解除(武器回収)や和平合意の履行を監督する要員警護のための作戦を展開してきた。

 
2)非5条任務の地理的範囲については加盟国間で考え方の相違がある。米英は広範な地域を念頭におき、一方、仏独は限定的な解釈をしていると指摘されている。NATOの意思決定はコンセンサス方式であり、その行動には全加盟国の同意が必要。

 
3)統合軍事機構の下に置かれた司令部の数を65から20にすることなどが決定され、本年までに移行を完了するとしている。NATOは1)欧州連合軍を作戦連合軍と改名して、NATO唯一の作戦部門とし、その下に統合戦力司令部などを編成することや、2)大西洋連合軍を変革連合軍と改名し、作戦任務に携わらず、米統合軍司令部と密接に関連して機能させることなどを、本年6月の国防相会議で決定した。

 
4)テロとの闘いのために出動した米部隊の代替、テロ攻撃に関する情報交換、各国の米軍関係施設の警備強化、米軍への可能な支援、領空通過、軍港・軍用空港の使用、AWACS・艦隊の派遣など。

 
5)北大西洋条約第4条に基づく協議。

 
6)フランスが参加していない防衛計画委員会において決定された。

 
7)WEUは西欧の共同防衛を目的に1954(昭和29)年に設立された。常備部隊は備えていない。英、独、仏など10か国が参加。

 
8)政治・安全保障委員会、軍事委員会及び幕僚部。2000(平成12)年3月に暫定的に発足し、同年末に正式に発足。なお、WEUは、大幅に縮小されながらも集団的防衛任務を維持し存続するとしているが、軍事参謀部の活動を終了するなど、危機管理の主体としては消滅。

 
9)NATO欧州加盟国のNATOに対する貢献度の増大と、NATOが関与しない場合における欧州独自の対処能力の確保を目的とする構想。

 
10)1998(平成10)年のサンマロ宣言で、EUが信頼に足る軍事力に支えられた自立した行動力を保持することに英仏が合意した。

 
11)加盟各国などが合計で兵員10万人以上(予備役を含む)、作戦機約400機、艦艇約100隻のプールを拠出し、2003(平成15)年までに紛争防止や危機管理などの任務を遂行できる5〜6万人規模の部隊を60日以内に展開し、最低1年間は維持できる態勢を整備することとなっている。

 
12)政治・安全保障委員会、軍事委員会及び幕僚部。2000(平成12)年3月に暫定的に発足し、同年末に正式に発足。

 
13)EUとしては、文民警察などを既にボスニア・ヘルツェゴビナに派遣している。

 
14)昨年12月20日のNATOプレスリリースによると、2002年度のNATO諸国の国防費総額(推計)は522,213百万ドルであり、米国の国防費350,857百万ドルがそのうち約67%を占めている。

 
15)昨年10月、EU首脳会議は本年の創設を目指すEU緊急展開戦力について、トルコなどEU非加盟のNATO加盟国6か国の関与を認めるEU・NATO間の合意案を採択し、同年12月、EUとNATOの合同会議で正式調印された。

 
16)信頼醸成や相互運用性の確保などを目的にNATOと中東欧諸国が個別に協力協定を締結。

 
17)新規加盟国は、軍隊の文民統制の確立、民族問題や国境問題の平和的解決などの主要な原則を加盟に際し受け入れるべきとされた。

 
18)1999(平成11)年にポーランド、チェコ、ハンガリーが加盟。来年5月にはルーマニア、スロベニア、エストニア、リトアニア、ラトビア、ブルガリア、スロバキアの7か国が加盟の予定。

 
19)本節2参照。

 
20)ポーランド、ハンガリー、チェコ、スロバキア、スロベニア、エストニア、ラトビア、リトアニア、マルタ、キプロス共和国の10か国。ルーマニアとブルガリアについては2007(平成19)年の加盟を目標とする方針も改めて確認。トルコについては、04(同16)年12月のEU首脳会議までに加盟条件を満たしていると判断されれば加盟交渉を開始するとしている。

 
21)5か国(英、オーストラリア、ニュージーランド、マレーシア及びシンガポール)防衛取極への貢献、重要訓練への参加、輸出支援とされている。

 
22)ドイツは即応部隊(15万人)と基礎軍事組織(10.8万人)を常備兵力とカウントし、在職中に教育・研修を受ける軍人の定数(2.2万人)をその枠外としている。

 
23)フランス軍には、地方の一般警察事務も担当する軍官警察隊(国家憲兵隊)が設けられている。

 
24)志願制の下、陸・海・空・軍官警察隊(国家憲兵隊)全体で44万人(事務官などを含む。)を維持することや、装備の近代化により、同盟国との相互運用能力を確保すること、EU緊急展開戦力の中核として機動展開能力などの強化を図ること、国内治安維持のために軍官警察隊(国家憲兵隊)などの機能を強化することなどを決定している。

 
25)1990(平成2)年に署名したNATOとWPO加盟国。

 
26)ゾーン3:ドイツ、ベルギー、オランダ、ルクセンブルク、ポーランド、チェコスロバキア、ハンガリー。ゾーン2:ゾーン3に加え、デンマーク、イタリア、フランス、英国、ソ連(沿バルト、ベラルーシ、沿カルパト、キエフ軍管区)。ゾーン1:ゾーン3、2に加え、ポルトガル、スペイン、ソ連(ウラル山脈以西など)。

 
27)偶発的な軍事衝突を防ぐと共に、国家間の信頼を醸成するとの見地から、軍事情報の公開や一定の軍事行動の規制、軍事交流などを進める努力が行われている。これは、一般的に信頼醸成措置と呼ばれている。

 
28)1994(平成6)年には、同文書における通報・査察の対象となる軍事活動の範囲の拡大、各国の防衛計画などに関する透明性の向上や軍事関係者の接触の増大に関する規定を追加した「ウィーン文書1994」が採択されている。

 
29)条約の発効以前から、米露を含む一部署名国間で査察試験飛行が行われていた。


 

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