第4章社会の中の自衛隊


第1節活動する自衛隊

  1. 自衛隊の組織と人

    (1)自衛隊の組織

    自衛隊は、実力組織である陸・海・空各自衛隊を中心に、防衛大学校、防衛医科大学校、防衛研究所、技術研究本部、調達実施本部、防衛施設庁など、さまざまな組織で構成されている。

    わが国防衛の中核的役割を担う陸・海,空自衛隊は、各種の機能を備え、侵略に対して総合的な防衛力を発揮し得るように、その基本的な編成は、戦闘部隊と後方支援部門が均衡ある形で有機的に組み合わされている。

    さらに、これら自衛隊の隊務を防衛庁長官が統括するための補佐機関として、内部部局、陸、海、空各幕僚監部、統合幕僚会議が置かれている。

    (2)隊員

    1. 自衛官

      自衛官は、個人の自由意思に基づいて入隊するという志願制度の下で、幹部候補生、曹候補者又は、2等陸・海・空士などとして採用されている。自衛官の特徴は、一般の公務員より若い年齢で退職する若年定年制と士の一部について2年又は3年を勤務年限として採用する任期制を採っていることである。

      自衛官の勤務には、その任務の性格から、常時勤務態勢の維持に加え、航空機搭乗、艦艇乗組、落下傘降下など厳しい側面がある。このため、防衛庁では、隊員がその任務に誇りを持ち、安心して勤務できるよう一般職の国家公務員と均衡がとれ、かつ、自衛官の勤務の特殊性を考慮した給与を支給している。

      独身の曹士の大部分は、原則として駐屯地又は基地内の隊舎で生活しているが、勤務時間外には、外出・外泊して自由時間を過ごしている。また、隊舎や隊員が家族とともに生活する宿舎について、新設や建て替え、補修を図りつつ改善に努めている。さらに、厚生センターなどの厚生施設の整備にも力を入れている。

      自衛官の多くは、任期満了退職又は定年退職後の生活基盤の確保などのために再就職が必要である。防衛庁では、満足のいく再就職ができることを人事施策上の最重要事項の一つとして、従来から各種の就職援護施策を行っている。

    2. 予備自衛官

      わが国は、防衛出動時、自衛隊の実力を急速かつ計画的に確保することを目的として、予備自衛官制度を有しており、退職した自衛官のうち志願する者を予備自衛官として採用している。かれらは、平素は各々の職業に従事しているが、有事の際には、招集されて自衛官となり、後方警備、後方支援、基地防空などの要員として勤務する。また、平時においても、定期的に毎年、短期間の訓練招集に応じている。

    3. 事務官など

      事務官、技官、教官などは、主として国家公務員採用I種、防衛庁職員採用I種、II種、III種試験により採用される。

      事務官などは、内部部局での防衛政策の立案や全国各地における総務、厚生、会計、調達、基地対策など自衛隊の運営に必要な行政事務に従事している。

      また、科学技術の進歩が激しい現代において防衛力の質的水準の維持向上を図るため、技術研究本部の技官などがその英知を結集して研究開発に取り組んでいる。

  2. 教育訓練

    自衛隊がわが国防衛の任務を有効に遂行するためには、平素から、指揮官を始めとする隊員が高い資質と能力を持つとともに、部隊としても高い練度を有することなどにより、堅固な防衛態勢をとることが必要である。堅固な防衛態勢をとることは、わが国に侵略を意図する国に対して、その侵略を思いとどまらせる抑止力としての役割をも果たすものである。

    このため、自衛隊は、種々の制約の中で日夜厳しい教育訓練を行い、心身ともに健全で、練度の高い隊員の育成と精強な部隊の練成に努めている。


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