2023年6月に策定された宇宙安全保障構想のポイントは、次のとおり、3つのアプローチです。将来的な姿として、まず、①安全保障のための宇宙システム利用の抜本的拡大(宇宙からの安全保障)と②宇宙空間の安全かつ安定的な利用の確保(宇宙における安全保障)の全体像を「安全保障のための宇宙アーキテクチャ」として示しています。そのうえで、これを早期に実装するため、③安全保障と宇宙産業の発展の好循環の実現を図るべきことを明らかにしています。
本構想策定後の防衛省・自衛隊の取組状況としては、①宇宙からの安全保障の実現に向けて、JAXAと連携し、新型宇宙ステーション補給機(HTV(H-II Transfer Vehicle)-X)を宇宙実証プラットフォームとして活用したHGV探知・追尾の能力向上のための赤外線センサなどの実証に着手しています。さらに、情報収集コンステレーションを構築するための取組も進めているところです。
②宇宙における安全保障の実現に向けては、SDA能力の強化のため、2026年度の打ち上げを予定し、SDA衛星の整備を行っています。また、2023年12月には、米国をはじめとする同志国で構成される多国間枠組みである連合宇宙作戦イニシアチブ(CSpO:Combined Space Operations Initiative)への参加を実現しており、今後こうした枠組みも活用し、安定的な宇宙利用のための国際連携をさらに強化していく考えです。
③安全保障と宇宙産業の発展の好循環の実現に向けては、政府関係機関が行っている先端技術の研究開発を防衛目的にも活用し、防衛力の抜本的強化に繋げることとしており、重視する宇宙関連技術例を本構想でも示したところです(図表1)。2024年3月に策定された宇宙技術戦略にも一部これらの技術が盛り込まれています。防衛省・自衛隊としては、民間や政府の総合力を結集し、安全保障にかかる宇宙システムの効果的な研究開発・早期装備化の取組を推進していきます。
図表1:「安全保障のための宇宙アーキテクチャ」を構築するうえでの共通基盤技術の例(「宇宙安全保障構想」より抜粋)