Contents

第I部 わが国を取り巻く安全保障環境

3 各国の軍近代化

東南アジア各国は、近年、経済成長などを背景として国防費を増額させ、第4世代戦闘機を含む戦闘機や潜水艦などの装備品の導入を中心とした軍の近代化を進めている。

また、南シナ海における領有権をめぐる係争などを背景に、各国は、艦艇、無人機などのISR能力強化に努めている。

インドネシアは、ラファール戦闘機(仏)42機の調達を計画しているほか、F-15EX戦闘機(米)36機の調達に向け米国と交渉している。韓国との間では、韓国製209級潜水艦3隻を購入する契約を締結し、2隻を韓国で、3隻目をインドネシア国内で生産した。また、2016年1月、第4.5世代戦闘機(KF-21)の共同開発の費用分担や協力内容を定めた合意書を締結している。米国からは、スキャンイーグル偵察無人機を導入している。中国との間では、2019年10月、国軍創設記念式典の中で中国のCH-4無人機を展示したほか、同年12月、この無人機のデザインを取り入れた国産のブラックイーグル無人攻撃機の試作機を公開した。

マレーシアは、国産の沿海域戦闘艦(LCS)6隻の建造を推進しており、2017年8月に1番艦が進水した。加えて、2021年12月までに、中国から沿海域任務艦(LMS:Littoral Mission Ship)4隻を導入している。また、米国からスキャンイーグル無人偵察機を導入している。

ミャンマーは、2019年12月、インドからキロ級潜水艦を受領し、2021年12月には、中国から受領したミン級潜水艦を就役させた。同国の潜水艦の調達は近隣諸国も注目している。また、2022年12月までに、ロシアからSu-30戦闘機を導入している。

フィリピンは、南シナ海における領有権をめぐる係争などを背景に、近年装備の近代化を進めている。

航空戦力については、2015年11月から韓国製FA-50PH軽戦闘機を順次導入し、2017年5月までに合計12機を配備した。現在は、マルチロール戦闘機の調達を計画しており、スウェーデン製JAS-39グリペンと米国製F-16が候補にあがっている。また、2020年10月、ブラジルからA-29軽攻撃機6機を受領し、同年11月、米国のスキャンイーグル偵察無人機を受領した。また、2022年1月、インドから超音速巡航ミサイル「ブラモス」を調達する契約を締結した。

海軍戦力としては、2016年までに、米国からハミルトン級フリゲートを3隻導入するとともに、2017年までにインドネシア製ドック型輸送揚陸艦を2隻導入した。また、2021年3月までに、韓国製フリゲート2隻を導入した。2019年8月、韓国から供与されたポハン級コルベット1隻が就役したことで、フィリピンは長期にわたり欠如していた対潜戦能力を復活させた。さらに、同年9月、フィリピンは陸海空統合演習「DAGIT-PA」を実施し、同年6月に就役したAAV水陸両用車4両を運用した。

シンガポールは、軍の近代化に努めている、世界有数の武器輸入国である。

航空戦力については、2012年までに米国製F-15戦闘機を24機導入したほか、F-35統合攻撃戦闘機計画に参加している。2020年1月、米国政府は、シンガポールへのF-35B戦闘機の売却を承認した。

タイは、2014年7月、潜水艦隊司令部を発足させており、2017年4月には、中国からユアン級潜水艦を今後11年間で合計3隻購入することを海軍が計画し、うち1隻の購入を閣議決定した。しかし、2020年4月、新型コロナウイルス感染症対策予算を確保するため、中国のユアン級潜水艦2隻の調達を延期することを公表した。また、2012年9月にフリゲート2隻を導入する計画が閣議で了承され、1隻目として2018年12月に韓国製フリゲートを受領した。さらに、2019年9月、タイは、中国の071ドック型輸送揚陸艦1隻の購入契約を締結した。加えて、2013年までに、スウェーデン製JAS-39グリペン戦闘機12機を導入しているほか、米国から購入したストライカー装甲車60両のうちの35両を受領した。

ベトナムは、2017年1月までにロシア製キロ級潜水艦6隻を導入したほか、2018年2月までにロシア製ゲパルト級フリゲート4隻の運用を開始した。航空戦力については、ロシア製Su-30戦闘機を2004年から順次導入しており、これまでに最大36機が導入されたと報じられている。さらに、2020年1月、ベトナムはロシアのYak-130練習機12機を発注したと報じられた。また、米国のスキャンイーグル無人偵察機を導入している。