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第I部 わが国を取り巻く安全保障環境

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第2章 ロシアによる侵略とウクライナによる防衛

1 全般

ロシアによるウクライナへの侵略は、ウクライナの主権及び領土一体性を侵害し、武力の行使を禁ずる国際法と国際連合憲章の深刻な違反である。このような力による一方的な現状変更は、アジアを含む国際秩序全体の根幹を揺るがすものである。また、ウクライナ各地においてロシアによる残虐で非人道的な行為が明らかになっているが、多数の無辜(むこ)の民間人の殺害は重大な国際人道法違反、戦争犯罪であり断じて許されない。

第二次世界大戦後の国際秩序においては、力による一方的な現状変更を認めないとの規範が形成されてきた。そのような中で、国際の平和及び安全の維持に主要な責任を負うこととされている国際連合安全保障理事会(国連安保理)常任理事国の一つであるロシアが、国際法や国際秩序と相容れない軍事行動を公然と行い、罪のない人命を奪うとともに、核兵器による威嚇ともとれる言動を繰り返すという事態は、前代未聞と言えるものである。このようなロシアの侵略を容認すれば、アジアを含む他の地域においても力による一方的な現状変更が認められるとの誤った含意を与えかねず、わが国を含む国際社会として、決して許すべきではない。

国際社会は、このようなロシアによる侵略に対して結束して対応しており、各種の制裁措置などに取り組むとともに、ロシア軍の侵略を防ぎ、排除するためのウクライナによる努力を支援するため、戦車や火砲、弾薬といった防衛装備品の供与などを続けている。ウクライナ侵略にかかる今後の展開については、引き続き予断を許さない状況にあるが、わが国としては、重大な懸念を持って関連動向を注視していく必要がある。