リビアでは、2011年にカダフィ政権が崩壊した後、2012年にイスラム主義派が主体となる制憲議会が発足した。そして、2014年、新たな議会を設置するための代表議会選挙で世俗派が多数派となったため、代表議会への権限移譲をめぐりイスラム主義派と世俗派の間の対立が激化した。その結果、首都トリポリを拠点とするイスラム主義派の制憲議会と、東部トブルクを拠点とする世俗派の代表議会の2つの議会が並立する東西分裂状態に陥った。国連の仲介による2015年のリビア政治合意に基づき、統一政府「国民合意政府」(GNA:Government of National Accord)が発足したものの、東西の分裂状態が継続してきた。
2019年4月には、東部側最大の勢力であるハフタル総司令官の部隊「リビア国民軍」(LNA:Libya National Army)が首都トリポリ郊外に進軍、西部側GNA傘下の民兵と衝突した。東西の両勢力が関係国から無人機(UAV:Unmanned Aerial Vehicle)などの軍事支援を受け、トルコ製無人機の使用などによる支援の結果、西部側優位に戦況が転換した。また、ロシアの民間軍事会社の傭兵がリビアに派遣され、LNAを支援する一方、トルコはGNAの要請に基づき、トルコ軍部隊及び同国が支援するシリア人戦闘員をリビアに派遣した。2020年10月、GNA側とLNA側の代表との間で恒久的停戦合意が署名された後、2021年10月には国連の停戦監視員の派遣が開始され、外国人部隊や傭兵の撤収に向けた取組が継続されている4。
政治面では、停戦合意後に東西両勢力間で国連主導の政治対話が始まり、2021年3月には暫定国民統一政府が承認された。しかしながら、同年12月に予定されていた総選挙は時期未定で延期され、正式政府発足に向けた見通しは不透明となった。国内の統治及び治安の確立に向けた取組が注目される。