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資料20 日米安全保障協議委員会(「2+2」)共同発表(仮訳)(平成31年4月19日)

日米安全保障協議委員会(「2+2」)共同発表(仮訳)

2019年4月19日、日米安全保障協議委員会(SCC)は、河野外務大臣、岩屋防衛大臣、ポンペオ国務長官、シャナハン国防長官代行の出席を得て、ワシントンDCで開催された。会合において、閣僚は、全ての国が主権を有し、強固で、かつ繁栄する地域のための「自由で開かれたインド太平洋」という共通のビジョンを実現するという力強いコミットメントを確認した。日米安全保障条約が署名されてから数十年の後、日米同盟は、インド太平洋地域の平和、安全及び繁栄の礎であるとともに、一層複雑さを増す安全保障環境の中、盤石であり続ける。日米同盟は、ルールに基づく国際秩序を堅持し、日米両国民の共通の価値を促進するために不可欠な役割を果たし続ける。

閣僚は、両国の戦略的政策文書、すなわち、米国の国家安全保障戦略及び国家防衛戦略並びに日本の防衛計画の大綱の整合性を歓迎した。これらの戦略は、日米の安全保障面のパートナーシップが、2015年の日米防衛協力のための指針の目的に合致する形で、一層強固に、先進的に、かつ効果的に適応し続けることを示している。

閣僚は,国際的なルール、規範及び制度を損なおうとする地政学的競争及び威圧的試みが、日米同盟及び自由で開かれたインド太平洋という共通のビジョンに対する挑戦であるとの共通の懸念を認識した。閣僚は、こうした挑戦に立ち向かうために、日米同盟に支えられた、一層ネットワーク化された同盟及びパートナーシップの必要性を強調した。閣僚はまた、宇宙、サイバー及び電磁波を含む新たな領域における急速に進化する技術進歩に懸念を表明した。閣僚は,有事における日米同盟の優位性を確保し、平時における我々の制度及びルールに基づく秩序を守るために、これらの挑戦に共同で対処する必要性を強調した。

閣僚は、強固な二国間安全保障関係が、引き続き日米同盟の基盤であることを確認した。そのため、閣僚は、領域横断作戦における協力、日米同盟の能力強化並びに運用の即応性及び協力の強化が、我々の防衛関係を前進させる中核的目標であると決定した。閣僚は、両国が役割、任務及び能力を絶えず再評価する必要があることを確認しつつ、米国は、防衛力を強化するための日本の積極的な措置を歓迎した。

戦闘様相が変化していることを認識し、閣僚は、従来の領域と新たな領域の双方における能力向上及び更なる運用協力の重要性を強調した。閣僚は、日米同盟が領域横断作戦により良く備えるべく、宇宙,サイバー及び電磁波領域を優先分野として強調した。

サイバー空間に係る課題に関し、閣僚は、悪意のあるサイバー活動が、日米双方の安全及び繁栄にとって、一層の脅威となっていることを認識した。この脅威に対処するために、閣僚は、抑止及び対処能力を含む、サイバーに係る課題に関する協力を強化することにコミットしたが、優先事項として、各々の国が国家のネットワーク及び重要インフラ防護のための関連能力の向上に責任を負っていることを強調した。閣僚は、国際法がサイバー空間に適用されるとともに、一定の場合には、サイバー攻撃が日米安保条約第5条の規定の適用上武力攻撃を構成し得ることを確認した。閣僚はまた、いかなる場合にサイバー攻撃が第5条の下での武力攻撃を構成するかは、他の脅威の場合と同様に,日米間の緊密な協議を通じて個別具体的に判断されることを確認した。

閣僚は、日本の安全及びインド太平洋地域の平和と安定を確保するに当たって米国の拡大抑止が果たす不可欠な役割を認識した。米国は、核及び通常戦力を含むあらゆる種類の米国の軍事力による日本の防衛に対するコミットメントを改めて表明した。

閣僚は、関連する国連安保理決議に従った、完全な、検証可能な、かつ不可逆的な方法での北朝鮮の全ての大量破壊兵器、弾道ミサイル並びに関連計画及び施設の放棄の実現に向けた国際社会による現在進行中のコミットメントの重要性を改めて表明した。閣僚は、米朝首脳会談を通じたものを含む、朝鮮半島の最終的かつ完全に検証された非核化を達成するための米国の外交努力を歓迎した。閣僚は、特に、違法な「瀬取り」への対処における、国連安保理決議の履行に係る国際的な取組を主導することへのコミットメントを確認するとともに、国連安保理決議の履行に参加する他のパートナー国との協力を強化し、向上させることにコミットした。閣僚はまた、北朝鮮において拘束された米国民を帰還させるための成功した取組を認識するとともに、北朝鮮に対し、日本人拉致問題を即時に解決するよう求めた。

閣僚は、地域における米軍の態勢が、強固であり続け、また、明瞭な脅威分析に基礎付けられ続けることを再確認するとともに、地域における抑止及び安全保障の確保に係る協議を深化させることを決意した。閣僚はまた、日本,米国及び韓国の間での協力の重要性を強調するとともに、三か国間の安全保障協力及び訓練を促進するために協働することにコミットした。

閣僚は、東シナ海及び南シナ海における現状を変更しようとする威圧的な一方的試みに関し、深刻な懸念及び強い反対の意を表明した。閣僚は、東シナ海の平和と安定を確保するために協働する決意を新たにするとともに、日米安全保障条約第5条が尖閣諸島に適用されること及び両国が同諸島に対する日本の施政を損なおうとするいかなる一方的な行動にも反対することを再確認した。

閣僚は、地域のパートナー国との共同演習及び寄港,海洋状況把握及び法執行といった分野における能力構築、並びに質の高いインフラを通じた持続可能な経済開発及び連結性の促進を通じたものを含め、自由で開かれたインド太平洋の実現のために二国間及び多国間で協働することへのコミットメントを新たにした。閣僚はまた、日米安全保障体制の地域における米軍の一層のプレゼンスを促進する上での極めて重要な役割を認識した。

米国が日本における前方展開兵力を引き続き維持することを可能にすべく、閣僚は、米軍再編を着実に実施するとの両政府のコミットメントを再確認した。閣僚はまた、普天間飛行場代替施設(FRF)の意義のある進展を歓迎し、FRFをキャンプ・シュワブ辺野古崎地区及びこれに隣接する水域に建設する計画が、普天間飛行場の継続的な使用を回避するための唯一の解決策であることを再確認した。閣僚は、同計画を可能な限り早期に完了するとの強い決意を強調した。

日米同盟の深さと幅広さを認識し、閣僚は、追加的な二国間の協力の分野を詳述するファクトシートを発出することに合意した。

2019年日米安全保障協議委員会ファクトシート

2019年4月19日、マイケル・R・ポンペオ国務長官、パトリック・シャナハン国防長官代行、河野太郎外務大臣及び岩屋毅防衛大臣は、ワシントンDCで会談を行った。共同発表に基づき、閣僚は、以下の共通の優先事項及び取組を通じ、米国民及び日本国民が日米同盟を強化し、自由で開かれたインド太平洋を築くために協力していくものであると議論した。

I 二国間の安全保障・防衛協力

領域横断作戦のための協力

  • あらゆる領域横断作戦における宇宙の不可欠な役割を強調しつつ、閣僚は、機能保証、相互運用性及び運用協力を強化する宇宙関連能力に係る協力の深化の重要性を強調した。双方は、宇宙状況監視(SSA)に係る協力の利益を認識するとともに、日本によるディープ・スペース・レーダーの開発及び2023年の打ち上げが予定される日本の準天頂衛星システムへの米国が提供するSSAペイロードの搭載の機会を強調した。閣僚はまた、新しく革新的な宇宙に関する考え方を活用し、同盟が必要とすることを支援する方策を特定することへの関心を強調した。
  • 閣僚は、日本のイージス・アショアの適時かつ円滑な配備を通じたものを含め、能力を強化し、経空・ミサイル脅威に対する日米それぞれの統合防衛を強化することを決定した。閣僚はまた、中距離ミサイルの世界的な拡散に係る懸念を共有し、この増大する脅威に対処するために協働することにコミットした。

日米同盟の能力強化

  • 閣僚は、F-35、E-2D、V-22、スタンド・オフ・ミサイル及びイージス・アショアといった高性能の装備品の日本への導入を通じたものを含め、現在及び将来双方の必要性を満たすよう、日米同盟の能力を近代化し、適応させることの重要性を改めて表明した。米国は、9機のE-2Dを購入するために複数年度予算プロセスを活用するとの日本の決定を歓迎した。閣僚は、FMSプロセスの合理化を更に進めるために、複数年度予算の活用並びに価格透明性及び早期かつ効果的な精算手続の確保の重要性を認識した。
  • 相互運用性を強化するために、閣僚は、防衛装備品の標準規格化、防衛ネットワークの共有及び新興技術に関する協力を推進する意図を再確認した。閣僚は、SM-3ブロックIIAに係る進展及び予定される生産段階への移行並びに水陸両用作戦技術に係る迅速化された共同研究プロセスを歓迎した。
  • 日米同盟の技術優位性はいかなる時も我々の敵対勢力から保護されなければならないとの認識の下、閣僚は、日米同盟が進化する脅威に直面する中で、秘密情報の保護、技術優位性の維持並びに共通の経済及び防衛上の優位性の保持のために、情報保全に係る政府全体の取組を強化し、向上させることにコミットした。閣僚は、任務保証に必要な、防衛産業基盤、国家のネットワーク及び重要インフラに対する脅威に留意しつつ、一層のサプライチェーン・セキュリティの必要性を強調した。

運用の即応性及び協力

  • 閣僚は、平時及び有事における運用の双方に不可欠な要素である日米同盟の即応性、相互運用性及び抑止力を向上させるための手段として、運用協力を深化させることにコミットした。その結果、閣僚は、相互のアセット防護、共同プレゼンスオペレーション及び共同ISR活動、物品役務相互提供協定の下での拡大された範囲における後方支援並びに現在進行中の連絡官派遣の着実な実施を歓迎した。
  • 閣僚はまた、相互運用性、抑止力及び対処力を強化し、地元とのより強固な関係を構築するために、両政府が、訓練区域に加え、自衛隊及び米軍の施設の共同使用を促進することを再確認した。閣僚は、共同計画、及び非戦闘員を退避させるための活動に係る協力に関する着実な進展を歓迎した。

II 在日米軍

  • 閣僚は、地元への影響を軽減するための取組を継続しつつ、即応性及び抑止力を向上するために、米軍再編を着実に実施するとの両政府のコミットメントを再確認した。閣僚は、米軍の地元との関係に係るプログラムを立ち上げ、強化する取組を歓迎した。
  • 閣僚は、航空機の緊急時使用のための航空自衛隊新田原基地及び築城基地の施設整備に係る進展を歓迎した。
  • 閣僚は、昨年の厚木飛行場から岩国飛行場への空母航空団部隊の移駐を歓迎した。米国は、新たな自衛隊施設のための馬毛島の取得に係る日本政府の継続的な取組に対する評価を表明した。同施設は、大規模災害対処等の活動を支援するとともに、通常の訓練等のために使用され、併せて、米軍による空母艦載機着陸訓練(FCLP)の恒久的な施設として使用されることになる。米国は、恒久的なFCLP施設が米軍の安全な運用及び訓練に大いに貢献することになると改めて表明した。閣僚は、可能な限り早期に当該恒久的な施設の整備を完了させるために、緊密に取り組む意図を表明した。
  • 閣僚は、グアム協定及び約9,000人の米海兵隊の要員の沖縄から日本国外の場所への計画された移転に係る着実な実施の進展を歓迎した。閣僚は、2020年代前半にグアムへの移転が開始するとの計画を再確認した。
  • 閣僚は、飛行安全及びこの問題に係る国民の懸念に対処する重要性を認識した。閣僚は、迅速な情報共有を促進させること、飛行安全に係る定期的な日米協議を継続することにコミットした。双方は、日米同盟のための最高レベルの即応性及び能力を維持するため、飛行訓練を含む全ての訓練の必要性を認識した。

III 自由で開かれたインド太平洋のためのパートナー国との協働

  • 閣僚は、ASEANの中心性・一体性への支持、共同訓練・演習、能力構築、防衛装備・技術協力等を通じたものを含む東南アジアにおける多国間協力へのコミットメント及び東アジア首脳会議、ASEAN地域フォーラム及び拡大ASEAN国防相会議を含むASEAN関連の枠組みへの支持を改めて表明した。メコン地域の国の自律的かつ持続的な開発を支援するために、閣僚は、国境を越える犯罪及び取引を含む国境を越える共通の課題、地域の連結性、エネルギー安全保障、及びエネルギーシステムの更なる統合に対処するべく、地域の国々を支援するために、緊密に連携することにコミットした。
  • 閣僚は、日米豪閣僚級戦略対話を通じたものを含む日米豪三か国間の継続的な協力及びハイレベル協議を歓迎するとともに、東南アジア及び太平洋島嶼国での三か国共同演習及び能力構築の重要性に留意した。閣僚はまた、2018年の初めてとなる日米印首脳会合に満足の意をもって留意するとともに、マラバール2018やコープインディア2018等の重要な共同演習を強調した。こうした様々な三か国間の取組を踏まえ、閣僚は、日米豪印の四か国間の取組の定期化を歓迎した。閣僚はまた、英国及びフランスの地域におけるプレゼンスの向上を歓迎するとともに、航行の自由を支持する活動、寄港及び違法な「瀬取り」への対策を含む分野における一層の協力を要請した。
  • 閣僚は、航行及び上空飛行の自由その他の適法な海洋の利用の完全な尊重を要請するとともに、これらの原則を支える活動の重要性を改めて表明した。
    閣僚は、全ての当事者に対し、南シナ海における係争ある地形の非軍事化を追求すること、武力による威嚇又は武力の行使によらずあらゆる海洋紛争を平和的に解決すること、1982年の国連海洋法条約に反映された国際海洋法に基づき海洋に係る主張を明確にすること並びに法的及び外交的プロセスを完全に尊重することを要請した。
  • 閣僚は、2016年7月の比中仲裁裁判の判断の両当事者にとっての重要性を強調した。閣僚はまた、国際法に完全に従うものであって、ASEAN諸国が炭化水素資源開発及び軍事演習等に関し、自ら選択する国及び外国機関との間で協力する権利を堅持する南シナ海における行動規範の重要性を強調した。

IV 2020年東京オリンピック・パラリンピック

  • 閣僚は、2020年東京オリンピック・パラリンピックの成功に向けて、両政府が、政府全体の努力を通じて、引き続き緊密に協力する意図を確認した。

(了)

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