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<解説>北朝鮮の核・ミサイル能力(核兵器の小型化、弾頭化技術の現状を踏まえ)

韓国軍及び在韓米軍に対して通常戦力において著しく劣勢にある北朝鮮は、その劣勢を補うべく核兵器や弾道ミサイルの開発の推進及び運用能力の向上を図ってきました。

弾道ミサイルに核兵器を搭載して攻撃するに当たり、技術的には、核兵器を弾道ミサイルの弾頭として搭載できる程度まで小型化し、かつ、弾頭が大気圏に再突入する際に発生する熱から弾頭部の変形や破壊などを防ぐといった大気圏再突入技術も獲得していることが必要です。

核兵器の小型化については、相当の技術力が必要とされていますが、米国、旧ソ連、英国、フランス、中国が1960年代までにこうした技術力を獲得したとみられることや過去6回の核実験を通じた技術的成熟が見込まれることなどを踏まえれば、北朝鮮は核兵器の小型化の実現に至っているとみられます。

また、一般に、弾道ミサイルが長射程になるほど、例えば速度が上がることで生じる熱も上がるなど、弾頭の大気圏再突入技術の獲得は困難になるとされますが、既に実戦配備されているとみられるノドンやスカッドERに加え、北朝鮮が「北極星」や「北極星2」と呼称する弾道ミサイルといったわが国を射程に収める弾道ミサイルについては、既に必要な技術を獲得しているとみられます。さらに、北朝鮮は、16(平成28)年3月に大陸間弾道ミサイル(ICBM)の大気圏再突入環境を模した試験を実施し、成功させた旨公表するなど、より長射程のミサイルの技術の獲得を追求しているとみられます。

こうしたことを踏まえれば、北朝鮮は核兵器の小型化・弾頭化を実現し、これを弾道ミサイルに搭載してわが国を攻撃する能力を既に保有しているとみられます。他方、より長射程の弾道ミサイルの実用化に必要な技術を獲得しているかについては、引き続き慎重な分析が必要です。

今後、北朝鮮が弾道ミサイル開発をさらに進展させ、ICBMに核兵器を搭載できる技術を獲得するなどした場合は、米国に対する戦略的抑止力を確保したとの認識を一方的に持つに至る可能性があります。仮に、そのような抑止力に対する過信・誤認をすれば、北朝鮮による地域における軍事的挑発行為の増加・重大化につながる可能性もあり、わが国としても強く懸念すべき状況となり得ます。

こうしたことから、核・ミサイル開発を含む北朝鮮の軍事動向は、わが国の安全に対する重大かつ差し迫った脅威であり、地域及び国際社会の平和と安全を著しく損うものです。わが国として北朝鮮の核保有を認めることは決してなく、引き続き米朝プロセスを後押しし、朝鮮半島の非核化に向け、米国・韓国などと緊密に連携していきます。

ノドン・ミサイル【朝鮮通信=時事】

ノドン・ミサイル
【朝鮮通信=時事】

ICBMに搭載する水爆と主張する物体【JANES】

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【JANES】